第22章 本気で悪戯すると後が大変【沖田、土方夢?】
翌朝、屯所にやって来た遼は、恐る恐る門をくぐる。
あまりにも警戒した遼の様子に、警護の隊士も思わず「大丈夫か」と声をかけた。
「大丈夫です。あの、今は……」
完全に大丈夫な人の態度ではない。
多分、今日死刑が執行される人の顔だ。
「お、遼ちゃんおはよう!」
「うわぁぁぁっ!
って、近藤さんか。脅かさないで下さいよ!!」
「え、あ、ごめん」
挨拶をしただけなのに逆切れされて、近藤はがくりと肩を落とす。
いつもならば不敬な態度を謝罪する遼だったが、今日は警戒心が全く解けず、ピリピリとした空気を纏っていた。
呆れた沖田が遼の襟首を引っ張って自室に連れて行く。
「警戒しすぎだ。気付かれたらどうするんでぃ」
「だって……昨日もよく眠れなかったんですよ」
「ったく、ばらす前に気付かれたらどうすんでぃ。ほらこれ」
真っ白な封筒を渡され、遼は一瞬息を飲んだ。
「渡し方は任せる。あとは頼んだぜ」
「……はい」
何が書いてあるのか開けて確認したい気もするが、中身を見たら渡せないような気がしてそっとポケットにしまう。あとは、どうにか土方と二人きりになるだけだ。
どう声をかけるべきか悩みながら朝議に向かう。
部屋には殆どの隊士が集まっており、遼は前方を見ないようにして席に着いた。
不自然なほどに下を向いている遼に、何人かの隊士が心配して声をかける。
遼は力なく「大丈夫です」と答えるが、全然大丈夫ではなさそうな雰囲気に、見かねた近藤が控室で休むように指示を出す。
背中に突き刺さる沖田(と、たぶん山崎)の視線を感じながら、遼は監察の控室に行くとごろりと横になった。
「絶対総悟くんに怒られるな…」
ポケットから封筒を出してぼんやりとそれを眺める。
「銀ちゃんを笑ったりしたから罰が当たったのかなぁ。いやでも、銀ちゃんのあれは自業自得か」
あの顔を思い出すと、笑いがこみ上げてきた。
「なんだ、私まだ、笑えるんだ」
どこぞのヒロインのようなセリフを呟いてみるが、別に誰がつっこんでくれるわけでもない。急に虚しくなって溜息をつくと、体を起こして副長室の前に向かった。