第22章 本気で悪戯すると後が大変【沖田、土方夢?】
見回りから戻った遼は、あまりの疲労感に軽い頭痛と眩暈を覚えた。
幸いにも事件や不審なこともなく終わったのだが、終始ぎすぎすした雰囲気が収まらず、遼は勿論、同行した隊士も気を遣ってストレスフルだ。見回りの間、さすがに沖田は手首の紐を外してくれていたが、そんなものが必要ない程に遼から離れなかった。
「ああ、疲れた……」
精神的疲労が大きすぎて頭がクラクラしてくる。
お気に入りのお茶を入れて一休みしようと控室に向っていると、土方と鉢合わせした。
完全に油断していたせいで、目を見開いたまま硬直する。
それは土方も同じだったようで、図らずも見つめ合う状況になった。先に我に返った土方は、思わず遼に手を伸ばした。
「遼、お前に確認したいことが……」
土方の手が肩に触れた瞬間、遼は「わあっ」と声を上げてその場を逃げ出す。向かった先は、沖田の私室だった。
丁度部屋に入るところだった沖田を捕まえた遼は、「もう無理です」と泣きつく。
「なんでぃ、情けねぇな」
「情けなくても何でもいいから、もう終わりにさせてくださいぃぃっ!」
「仕方ねぇな」
沖田に促されて部屋に入った遼は、膝をついた。完全なキャパオーバーで、身も心も限界に近い。もはや、助けてくれるなら誰でもいいとさえ思っていた。
「今日一日くれぇは楽しめると思ったんだけどな」
「無理ですよ。何か副長も変ですし、私もどう接していいのか……」
「成程な。遼、ネタばらしは明日の朝議の後にするぞ」
「え、嘘ですよね」
「明日の朝、アイツの部屋で二人きりになって手紙を渡せ」
「手紙?」
首を傾げる遼に、沖田は人の悪い笑みを浮かべる。
「手紙は俺が用意しておくから安心しな」
「それが一番安心できないんですけど」
もう嫌な予感しかしないと肩を落とす遼とは反対に、沖田は生き生きとしてきた。
「アイツに掴まらねぇよう、今日は送ってやる」
「わー、ありがとうございますー」
「全然感謝されてる気がしねぇな。このままアイツのところに引きずり出すか」
「いやっ、感謝してます!ありがとうございます!!」
「人間素直が一番だぜ」
沖田にすっかり主導権を握られた遼は、改めて銀時を笑った事を後悔した。