第22章 本気で悪戯すると後が大変【沖田、土方夢?】
無理やり自分を納得させて、食堂へと急ぐ。人が多くいる場所に行けば、鉢合わせたとしても互いに妙なことは言えないはずだ。
足早に食堂に飛び込むと、遼同様早目の昼食を摂るために何人かの隊士が並んでいた。その中に沖田の姿を見つけて、遼は近づいて声をかける。
「沖田隊長」
無視をされ、遼は諦めて名前で呼び直す。
「総悟くん、ご一緒してもいいですか?」
「遼から誘うなんて、ずいぶん積極的だな」
「変な言い方しないで下さい。仕事について少しご相談したいことが」
「例の件か?」
遼がこくりと頷くと、沖田は食堂の一番奥の席を指さし「あそこで食ってる」と言うと、注文した膳を受け取りそちらに向って行った。
列に並び膳を受け取った遼は、沖田の向かいに腰かけて先程土方とかち合った際に動揺して逃げてしまったことを伝える。勿論、名前を呼ばれたことは伏せて。
「というわけで、副長の前で平静でいられる自信がありません。だから、もう謝ってしまいませんか?」
「少なくとも、あと三日は楽しめるだろ。見回りは俺もついて行ってやるからうまくやりやがれ」
「いやいや、三日も無理ですって。すでに怪しまれてる気さえするんですけど」
「それはねぇな」
何か確証があるのかきっぱりと断言した沖田に、遼は首を傾げる。
「どういうことですか?」
「さあな。それより遼、見回りの間は俺から離れるなよ」
「はい。宜しくお願いしますね」
警戒心のない顔で笑った遼に、沖田はどうしてくれようかと重い溜息をついた。
沖田の予想では、土方は遼に対して本気で責任を取るつもりでいる。今朝の態度を見る限り、沖田にとって望ましくない目が出てしまう可能性があった。
「折角仕込んできたってのに」
「仕込んだって、料理でもするんですか?」
「もうすぐ食べごろだからな。横からかっ攫われねぇようにするので手いっぱいだぜ。ほら、早く食わねぇと遅れるぞ」
沖田に急かされ、遼は漸く食事に手を付ける。午後からの仕事を思うと気が重かったが、せめてしっかり食べて体力をつけておこうと山盛りの白米をほおばった。