第22章 本気で悪戯すると後が大変【沖田、土方夢?】
「目が覚めたら、俺もお前も裸で寝てた。で、その、何だ……明らかに使った後のが転がってた」
「あ、それは」
「最低限の理性はあったらしいが、何をどうしてこうなったか、その間の記憶が全くない」
「でしょうね」という言葉を飲み込んで、遼は黙って頷く。
「で、だ。何があったのか、教えてほしい」
「え?」
真剣な表情に、遼は僅かに躊躇った。申し訳なさが勝ちそうになり、ぎゅっと目を閉じた。
(副長、本当にごめんなさい。でも、わが身の方がかわいいんです)
脳裏に沖田の姿が浮かび、遼は覚悟を決めて嘘をつく。
「覚えてないなんて、ひどい……はじめて、だったのに」
ばれないように、目を閉じたままそう告げる。土方の反応が怖くて遼が目を開けられないでいると、頭を撫でられた。
「悪かった。責任はちゃんととる」
「……は?」
「だから、お前が思うようにしてくれ。全部忘れて無かった事にしろってんなら、忘れる。けど、俺らの関係を形にするってんならそうする」
目を開けると土方と目が合い、遼の全身から嫌な汗が噴き出した。そして、「この状況はまずい」と本能が告げる。
いっそ、全てを吐露してしまおうかと悩んでいると土方がくすりと笑った。
「まあ、すぐに結論を出せとは言わねぇよ。存分に悩んで、答えてくれ」
「は、いや、あのっ、実は……」
居た堪れなくなった遼が打ち明けようと口を開いた瞬間、携帯電話の呼び出し音がけたたましく鳴り響く。自分のものだと気づいた遼は、慌てて音のする方へ駆け寄り、表示されている名前を見て取るのを躊躇った。それでも尚鳴り続ける音に観念してボタンを押す。
「はい、もしも」
『おい。何やってんでぃ』
「いやー、あの、ちょっと思いがけない状況になりまして……実にすみません」
『仕方ねぇ。取り敢えず今は、何も答えずに部屋を出ろ。カメラは山崎に回収に行かせるから、テメェはイヤホンの回収を忘れんなよ』
「わかりました。すぐ、戻ります」
電話を切った遼は、大きなため息をついて真っ暗な画面を眺める。淡々とした命令口調ではあったが、電話の向こうの人物は間違いなく怒っていた。苛ついていたという方が正しいかもしれない。
ふと、視界の先にイヤホンを見つけ、土方にばれぬよう袂にしまった。