第21章 一番甘いお菓子の名前【銀時夢】
「手作りで申し訳ないんですけど、良ければ皆さんで召し上がってください」
「え、手作り?
すごいね、これ全部遼さんが作ったの?」
「はい。ちょっと甘めに作ってるので、飲み物と一緒に召し上がっていただく方がいいかもしれません」
「ありがとう。帰ったら頂くよ」
「近藤さーん、んなとこで何してんですかい。おう、遼じゃねぇか」
やって来た沖田に声を掛けられ、遼は「こんにちは」と頭を下げる。沖田は年下のはずなのだが、どうしてか最初から呼び捨てタメ口で話しかけられていた。
本人に理由を聞いたら「年上に見えないから」と、きっぱりと言い捨てられて以来、考えないようにしている。
「で、何話し込んでたんですかい?」
「遼さんがお菓子を作ったからって貰ったんだよ。ほら」
袋を覗き込んだ沖田は、中からカップケーキを取り出すとラッピングを解いてそれにかぶりついた。
「ん……甘ェ」
眉根を寄せた沖田に、遼は「ケーキですから」と苦笑する。
「総悟、行儀が悪いぞ。遼さん、お礼はまた今度させてもらうね」
「お礼なんて。作りすぎてしまっただけですから。良ければ今度、感想を聞かせてください。色々挑戦中なので」
「では、また」と言って近藤たちと別れようと振り返ると、慌てた様子の銀時が向かって来るのが見えて遼は首を傾げた。
「銀ちゃん?」
息を切らせて寄って来た銀時は、遼の肩をがっしりと掴む。
「おっ、まえ、勝手にどこ行ったかと……!」
「え、あ、ごめん、銀ちゃんぐっすり寝てたから」
「旦那ァ、束縛してると嫌われやすぜ」
「ああっ?
つーかお前、それ」
遼の隣でもぐもぐと口を動かす沖田の手にあるものに気付いた銀時は、遼と沖田の顔を交互に確認した。
「な、なに? 怖いんだけど」
「え、ちょっ、こいつが食べてるのって」
「遼が作った菓子ですぜ」
最後の一口を含むと、沖田は「ごちそうさん」と遼の頭をポンと叩く。
「沖田君よォ、それは宣戦布告と受け取っていいんだな?
その菓子は、遼が俺のために作ったってのに、先に食いやがって」
「そりゃあ残念でしたね。まあでも、宣戦布告で構いやせんよ」
「テメェ、良い度胸だな」