第21章 一番甘いお菓子の名前【銀時夢】
「ちょっと銀ちゃん、こんな所で喧嘩売らないでよ」
「総悟も、往来で揉め事はいかんぞ」
遼に宥められ、銀時は渋々怒りを収めた。近藤に窘められた沖田はやや不満げではあるが、「仕方ねぇ」と肩を竦める。
沖田を一瞥した銀時は遼の手を取ると歩き出した。
「遼、帰るぞ」
「え、あ、ちょっ」
半ば引きずられるようになりながら、遼は銀時の後をついて歩く。黙って歩く銀時の背中から、不機嫌が伝わってきた。
どうしたものかと考えている内に万事屋に到着し、玄関をくぐるなり銀時は遼を抱きしめる。
「わっ、ど、どうしたの銀ちゃん?」
「……充電。何か遼、甘いにおいがするな」
「それはまあ、お菓子作ったからね。そうだ、そろそろ冷蔵庫にしまったプリンも出来上がってるから食べてみてよ」
銀時を軽く押して離れると、遼は足早に台所に向かった。
冷蔵庫に入れておいたプリンは良い具合に固まっており、生クリームとイチゴをトッピングして居間に持っていく。
ソファに腰かけた銀時の前に「おまたせ」と言って差し出すと、ふいと顔を逸らされた。
「食べないの?」
「食べさせてくれないと食べられねぇ」
「……じゃあ、ここに置いておくね」
「あっ、ちょっ、遼ちゃん、ごめんってば!」
呆れた様子の遼に、銀時は慌てて謝罪する。
「銀さんちょっと拗ねただけだから!ちょっと甘やかしてほしかっただけだから!!」
「子供っぽいことしないでよ」
「あのさぁ、遼、ちょっとだけ、一口だけでいいから食べさせてくんねぇ?」
「頼むから」と懇願されて、遼は諦めてスプーンを手に取り、プリンを掬う。
「どうぞ」
銀時は口を開くと、ぱくりと咥えた。
遼はスプーンを抜き取ると、「どう?」と尋ねる。
「うまい」
「じゃあ、後は自分で食べてね」
「おう。でも、その前に」
ニヤリと笑った銀時は、遼を抱き寄せてキスをした。
離れる瞬間、唇を舐められて、遼は真っ赤な顔で銀時を見る。
「プリンも甘かったけど、一番甘くて俺好みなのはおめぇだな」
「……ばか」
恥じらう遼にもう一度キスをした銀時は、甘えるように遼の細い首筋に顔を埋めた。
―おわり―