第20章 愛、屋烏に及ぶ【近藤裏夢】
歯列をなぞり、口内を犯しつくすような激しい口吻に、遼の体から力が抜けた。
「わっ、だ、大丈夫?」
「んっ、はい。あの……」
すっかり蕩けた表情の遼を、近藤は苦笑しつつ抱き上げるとベッドに寝かせる。
「これが最後だよ。……大丈夫?」
見下ろされ、遼はほっと息を吐いた。何度体を重ねていても、この瞬間は慣れない。果てることのない欲望が、体の奥から湧き出してきているのに、素直に頷くことを恥じらってしまう。
「どうする?」
何て意地悪な質問だろうか。
断る理由なんて何もないのに、と遼は腕を伸ばした。
「したい、です」
「ん……俺も、したい」
口吻ながら、近藤は遼の帯を解き、袷を広げる。背中に手を回してブラジャーを外すと、遼がピクリと震えて甘い息を漏らした。
「んっ、ふうっ……」
全身に鳥肌が立つ。
露わになった肌の上を近藤の指が滑る度に、遼は僅かに体を震わせた。
「んあっ、あ…勲さ、んっ」
「まだ、触ってるだけだよ。それなのにそんなに期待した顔されたら、歯止めが利かなくなるかもしれない」
「大丈夫です。ですから、もっと触ってください」
強請る声が、熱を帯びていく。
やっぱり今日も、後戻りなんてできないのだと諦めて、近藤は遼の首筋に唇を落とした。
痕をつけるように、何度も何度もきつく吸い上げる近藤の頭を撫でながら、遼は自分にも何かできないかと考えてしまう。
知識も経験も少ない遼は、いつも与えられるばかりで、本当にこれでいいのかと不安になった。
愛しているのも、求めているのも、自分だけなのかもしれない、と。
「勲さん、…今日は、私が」
「私がって、え?」
「上手には、できないかもしれません。でも、勲さんに触りたいです」
冗談とは思えない口調に、近藤は戸惑いつつもどうするつもりか尋ねる。
「あの……本当は、よくわからないのですが……今日は私に任せて頂きたいんです」
「……わかった。君の思うようにしていいよ」
「ありがとうございます。では、仰向けで横になってくださいね」