第20章 愛、屋烏に及ぶ【近藤裏夢】
「やっぱりこうなるんだよなぁ」
ソファに体を沈めながら、近藤は深く深く溜息をつく。
江戸城に行き、お散歩デートを楽しんで居たはずなのに、気付いたらここに居た。
婚約者で、初めてでも無いのだがこうも毎回だと、若干心配になる。
どうしようかと悩んでいると、シャワーの音が止み、ごくりと喉を鳴らした。ぞくぞくと、這い上がってくるような欲求が全身を支配する。
「お待たせしました。どうぞ」
「あ、うん……」
入れ替わりに風呂に入った近藤の背中を見送って、遼はソファに身を沈める。
風呂から上がったばかりの体は火照っていて、ゆるゆると眠気がやってきた。
初めの頃は、緊張して息をするのも苦しかったのに、今ではすっかり落ち着いてしまっている。
「呆れられていないかしら」
今日も、誘導するようにここに来た。少しでも長く一緒に居たいと思うばかりに、いつもそれを求めてしまう。
そんな、浅はかで醜い独占欲が、沖田に嫌われる要因だとわかっていた。
誰よりも近藤の事を想っているのは沖田だと、知っている。
遼と同じように、近藤に救われて、近藤のために命さえ惜しまず差し出す覚悟があるのは、ただ一人——沖田だけだ。
異常なほどに執着しているからこそ、沖田は遼が気に食わないのだろう。
けれど不思議なもので、遼は沖田にどんなに嫌味を言われようと、嫌われようと、彼に対して負の感情を抱くことはなかった。それはきっと、沖田が近藤にとって大切な人だからだろう。
「でもまた、嫌われてしまいますね」
「嫌われるって、誰に?」
いつの間にか風呂から上がっていた近藤に尋ねられ、遼は驚いて瞬きを繰り返した。
「遼さん、大丈夫?
えっと……無理、しなくていいよ」
「え、あの、ごめんなさい。少し考え事をしていました」
そう言って、遼は近藤に腕を伸ばす。近藤は、少し躊躇いながら遼を抱きしめると、ゆっくりと口吻た。
「んっ」
何度も音を立てて口吻ると、二人の体温が上がっていく。頭の奥が痺れていくような感覚に、遼は近藤に縋るようにしがみついた。察した近藤は、遼の唇をぺろりと舐めて開いた口に舌を侵入させる。