第19章 星の降る夜【高杉夢】
声を弾ませた遼を、高杉は「馬鹿馬鹿しい」と一蹴した。
「私の初恋だけ知られてるなんて狡い!
どうせ私が知らない人でしょ?教えてくれたっていいじゃない」
「聞いてどうする?」
「え、いや、どうもしないけど。ただ、知りたいなーって思っただけだし」
キョトンとした顔で答える遼に、高杉は「やっぱりガキだな」と呆れてしまう。
「晋ちゃんって、みんなみたいに色々話してくれないから、どんな人が好きとかそういうの全然知らないんだよね。ちなみに、銀ちゃんは最近のおすすめは看護婦さんだって言ってたよ」
「くだらねぇ。銀時のはどうせ、本かビデオの話だろ」
「あたり。よくわかったね」
「テメェも何で、そんな話をアイツとしてんだ」
「えーっと、何でだっけ。私が病院に潜入捜査するって言ってた時だったかな?」
思い出そうと首を傾げる遼に、高杉は深く溜息をついた。
どう考えても、銀時は遼に気があるとしか思えない。次に会ったときは一発殴っておこうと心に決める。
「やっぱり晋ちゃんも、看護婦さんとかがいいの?」
「何でそうなる」
「いや、前に辰馬が、晋ちゃんと銀ちゃんで同じ遊女を指名してたって言ってたから、てっきり好みのタイプも同じなのかなって。あ、もしかして、初恋の人も同じとか?」
「辰馬に、今度会ったら殺すって伝えとけ。それから、この話はしめぇだ」
「えーっ」と不満を漏らす遼の頭を軽く小突くと、高杉は「おとなしくここで待ってろ」と、部屋を出ていった。
残された遼は、椅子に腰かけると唇を尖らせて独り言ちる。
「初恋くらい教えてくれたっていいのに。そうしたら、……晋ちゃんの初恋になれるかもしれないのにな」
胸が痛むのは、きっと思いが叶わないと知っているからだ。
いくら星に願っても、一番にはなれない。
それが解っているからこそ、何度も願ってしまうのだろう。
高杉の幸せを。
そして、彼の願いが叶うことを。
目を閉じて、祈る。