第19章 星の降る夜【高杉夢】
頬をなぶる冷たい風に現実に引き戻された高杉は、紫煙を吐き出しながら、夜空を見上げる。
奇しくも今日は、幼い頃の遼と見た流星群が見られる日だ。
もう間もなく、あの時のように星が降る。
「アイツは今日も、星を見てるのか……」
あの日のように、目を閉じて祈る遼の姿が脳裏に浮かんだ。
ただひたすらに、高杉の事だけを願い続ける遼のいじらしさに、心が揺さぶられたあの日。
高杉も、星に願っていた。
どうか、遼が幸せであるようにと。
自分では、幸せにすることは適わないと知っているから――
「ふっ、俺らしくもねぇ」
自嘲して、高杉は星空に背を向けた。
星に祈れば願い事が叶うと、遼に教えたのは高杉だ。十年以上もその言葉を覚えて、ひたすらに高杉の事を願っていた遼。
それを、愛しいと思う。
「もし俺に、恋心なんてもんがあるとすれば、それはきっと――」
馬鹿馬鹿しい、と煙を細く吐き出した。
もし、恋心があるのなら
きっと、
初恋は遼以外には在り得ない
―終―