第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
五者五様に苦しんでいると、原田が「大丈夫か?」と声をかける。
「原田隊長、大丈夫に見えます?」
「いいや。で、愛染香の効果はどうだ?」
「そういえば……」
遼は恐る恐る四人を振り向く。
「……あれ?」
話によると、愛染香の効果は即効性だったはずだが、遼は四人の誰を見ても胸はときめかないし、動悸息切れもない。
至って平常心だ。
「なあんだ。原田隊長、全然効果ないですよ。もしかして、まがい物だったんじゃないですか」
「パチもんかよ。無駄骨だったな」
二人で顔を見合わせて笑っていると、突然土方が遼の肩を掴んで自分の方を向かせる。
叱られる、と遼は身を固くするが、土方の口から出たのは意外な一言だった。
「遼、俺と一緒にレッツパーリィーしないか?」
「……は?」
物凄いキメ顔で決めゼリフを言われて、遼はぽかんと口を開けたまま固まる。
土方は、思考停止した遼を顎クイして「いいだろ?」と攻め寄った。
「ちょっ、副長!何言ってるんですか!!遼ちゃんは俺と夢の国に行くんです!」
「何だ山崎、俺と遼の恋路を邪魔する気か?」
「すっ、凄んでもダメですよ!」
珍しく山崎が立ち向かっていると、その隙に沖田が遼を後ろから羽交い締めにする。
「うわっ、えっ?沖田隊長?!」
「遼は俺と一緒に土方さんをレッツパーリーするんでィ!」
「いやどういうこと!?土方さんをレッツパーリーって何ですか?!」
突然始まった茶番に、遼は勿論集まってきた隊士達も困惑した。
【神武は、自分と一緒に出掛ける】
「え、斉藤隊長も参加するんですか?」
ノート片手に頷く斉藤に、遼は唖然とする。
まさか、斉藤まで巫山戯始めるなんて、誰がこの状況を止めると言うのだ。
「とりあえず沖田隊長、離して下さいよ。ちょっと力入りすぎてて、骨がミシミシ言い始めてるんですけど」
「やだね」
「ぐえっ」
一層強く抱きしめられ、遼はほんの一瞬死を覚悟する。
「ん?」
しめられていると思ったら、どさくさに紛れて胸を揉まれていた。