第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
すっかり気が抜けていた為、いつもより数瞬気配に気付くのに遅れた。
「幕府の犬め!」
「っ!」
最初に気付いた沖田の一閃で、襲ってきた浪士が倒れるが、直後に塀の上から「死ねぇっ!」という声と共に複数の浪士が降ってくる。
だが、相手が悪かった。
沖田、斉藤という剣豪に加え、土方や割と武闘派の遼もいる。
浪士達に勝ち目はない。
「俺もいるから!戦力だから!」
「山崎さん、ウロウロしてると危ないですよ」
「え?うわぁぁぁっ!?」
遼のぶん投げた浪士が山崎にクリーンヒットした。
「ああもう。大丈夫ですか?」
「山崎なんかほっとけ」
「ほら、最後の一匹だ」
沖田が勢いよくぶっ飛ばした浪士は、やっぱり山崎にクリーンヒットする。
「うわっ。山崎さん、生きてます?」
「いつもの事だろ。さっさと起きろ山崎ィ」
「ううっ、何で俺、こんな役ばっかり……」
半泣きで起き上がった山崎を不憫に思ったのか、遼は埃まみれの山崎をパタパタとはたいてやる。
「んなコトより、ブツは無事か?」
「はい、ここに」
土方に尋ねられ、遼は懐から愛染香の入った袋を取り出した。
土方が手を伸ばし、それを受け取ろうとした瞬間、聞き覚えのある高笑いが響き渡る。
「はっはっはっは、真選組の諸君、久しぶりだな!」
「その声は!」
「桂!!」
「油断大敵だぞ、真選組ィィ!!」
「げ」
桂が高笑いと共に投げたのは、お馴染みの爆弾だ。
そして、この場には愛染香。
「ヤバいっ!」
爆弾自体は遼より離れた場所で爆発したが、風に流され飛び火する。
勿論、愛染香に。
ボフンという音と共に、辺りに煙と香りが充満した。
近距離にいた遼と土方は、モロにそれを吸い込んでしまう。
沖田と山崎も口元をおさえるのが僅かに遅れ、思い切り吸い込んだ。
全員が「マズい」と思った瞬間、屯所から彼らに向かって消火器が一斉掃射される。
咳き込みながら顔を上げた遼は、土方、沖田、山崎と、何故か近くに来ていた斉藤と目が合った。
「げ」
五人が硬直していると、煙をおさえる為に放水され、全員見事にずぶ濡れになる。
「ゲホッ」
「お、溺れるかと思った……」
「最悪だ」
「鼻に水入った」
【ノートが無事で良かった】