第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
同日20時。
山崎の報告を受けた土方は、沖田、斉藤、原田、遼を配下に大江戸の外れにある廃倉庫に向かう。
愛染香対策のマスクを装備して臨んだ任務は、僅か1時間程でつつがなく終了し、一行はすっかり気が抜けた状態で帰路についていた。
原田が運転する車に乗った沖田は、袋一杯に詰め込まれた愛染香をもてあそぶ。
「楽な任務でしたねェ」
「まさかこんなに早く帰れるとはな」
「良かったじゃないですか。それより沖田さん、それ、危険物なんですから取り扱い気を付けて下さいよ」
バックミラー越しに遼に注意された沖田は、お手玉よろしく袋を放り、意地悪い笑みを浮かべた。
「試しに1個、燃やしてやろうかィ」
「ちょっ、冗談でもやめて下さいよ!」
慌てる遼をよそに、沖田は余裕の表情で一つ取り出すと鼻を近づけた。
「なーんか、甘ったるい匂いだな」
「沖田さん!?」
「ん?こんなんじゃ何ともならねぇよ」
「ダメ、没収です!」
ケラケラと笑う沖田から袋を奪い、重い溜息を吐く。
2人のやり取りを黙って見ていた原田は、耐えられなくなりガハハと笑った。
「神武が相手にするから沖田さんが巫山戯るんだって」
「原田隊長、放っておいたら本気でやりますよ。沖田隊長は」
「俺ァ少年の心を忘れねぇんだよ」
「少年の心関係ないですよね。ただ沖田隊長が楽しみたいだけですよね」
いい加減にして欲しいと、肩を落とすが、沖田は勿論原田も吞気に笑っている。
「さ、屯所に着いたぞ。じゃあ、車を置いてくる」
「はい。ありがとうございます」
車を降りた二人は、先に到着していた土方達と合流し、屯所内へと入って行く。