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魂の色【銀魂短編夢】

第18章 情炎(土方裏)


屯所の門を潜った土方は、さっそく局長室に向かうと、近藤に挨拶をして簡単に状況を説明した。

「悪かったな、近藤さん。取り敢えず明日からはいつも通り出勤するから」
「トシが戻って良かったけど、もう暫く休んでもいいんだぞ。結婚してから纏まった休みなんて取って無かっただろ」
「もう十分休んだよ」

そう言って煙草に火を点けた土方に、近藤は苦笑しつつも安心してしまう。本当に、トッシーではなくなったのだと。

「今日は急ぎの仕事だけ片付けるから、何か有れば声を掛けてくれ」
「わかった。そうだ、トシ」
「ん?」
「遼ちゃんも色々大変だっただろうから、ちゃんと労ってやれよ。相当心配してたからな」
「わかってるよ」

紫煙を燻らせ答えた土方は、自室に戻りここ数日の報告書に目を通す。幸い大きな事件は無かったものの、不在にしたツケは大きく、気が付くとすっかり外が暗くなっていた。
気を利かせた鉄之助が食事をどうするかを尋ねに来なければ、そのまま没頭していただろう。

「副長、良ければこちらにお食事を運びましょうか?」
「ああ……いや、今日はもう帰る。テツ、そっちの書類だけ片付けておいてくれ。俺は帰るが、急ぎの事が有れば──」
「わかってるっす!局長に報告しておきますから、副長はゆっくりお休みになって下さいっす!」

気を回す鉄之助に、土方は苦笑しつつも今回はその気遣いに甘えて帰路につく。
門を出た所で、やって来た人影に声を掛けられ足を止めた。

「あれ、土方さんじゃねぇですかぃ」
「総悟か。またサボってたんじゃねぇだろうな」
「ひでぇや、こっちはアンタが不在で忙しく働いてたってのに」
「そりゃあご苦労さん。今後もその調子で頼まぁ」

ニヤリと笑って煙を吐き出した土方に、沖田もふっと笑うと屯所の中に消えていった。
土方の記憶の中に、ぼんやりと沖田の言葉が残っている。トッシーに「消えろ」と言った沖田。真選組の事だけを考え、真選組の為に生きている沖田は、土方が戻って来ることを望んでいた。

「気合い入れて仕事しねぇとな」

明日からはきっと、また沖田に命を狙われたり、腑抜けた隊士達の尻を叩く日々が始まるのだろう。そんな日常が戻って来た事に胸を撫で下ろした。
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