第16章 企画(沖田・新八夢)
「えっ、でも……」
「実は向こうの壁がちょっと壊れててね、一人くらいなら抜けだせるの。それに、副長はここにこんな荷物があるなんて知らないから、わざわざこっちまで見に来ないと思うよ」
「へぇ。でもこの荷物、一体何なんですか?」
「さぁ?
何か、沖田さんが個人的に仕入れた拷問用のアイテムだって言ってたけど……」
それを聞くだけで嫌な予感がした新八は、深く追求せず、遼に促されるままに箱と壁の隙間に隠れる。
「結構狭いですね」
「そうだね。新八くん、大丈夫?」
「はい。えっと、あの……もう手を離してもいいですよ」
「え?
あっ、ごめん!」
「あっ、謝らないで下さい!嫌だったわけじゃ──!」
二人して赤くなって固まってしまい、何とも言えない微妙な空気が流れた。
どうしたものかと思っていると、外から賑やかな声が聞こえ始め、慌てて息を詰める。
無意識に身を寄せてしまい、その温もりに新八はごくりと喉を鳴らした。身長差があまり無いせいもあって、密着すると殆ど目線が変わらない。新八が少し首を傾ければ近付いた顔が触れ合う程だ。
(これは、マズい……)
耳の奥に心臓が有るのかというほど、ドクドクと体内を巡る血液の音が響き、焦りを募らせる。
どうか速くこの時が過ぎ去ってくれ、と祈っていると、無慈悲にも蔵の扉が開かれる音がして、遼はますます新八に身を寄せてきた。
遼に好意を寄せている新八にとっては、嬉しくもあり、苦しくもある状況で、多少体温が上昇したとしても、誰も責められはしまい。
(姉上や、神楽ちゃんとは全然違う)
比較対象がこの二人というのも虚しいが、鼻腔を擽る香りや柔らかな体は十分過ぎる程に刺激的で、一瞬理性を手放してしまおうかと、邪な考えが脳裏をよぎった。
そんな妄想に耽っていたせいか、いつの間にかに消えていた人の気配や足音に首を傾げる。
「出て行ったね。はあっ、緊張した……」
「えっ、あ、そうですね」
「かくれんぼって久しぶりだけど、意外と本気で隠れるのって大変だね」
緊張が解けたのか、ふにゃりと笑った遼につられるように新八も肩の力を抜いた。そしてうっかり、段ボールの山に手を伸ばしてしまう。
「あっ!」
その瞬間、バランスを崩した段ボールはいとも簡単に崩れ、二人を下敷きにした。