第16章 企画(沖田・新八夢)
新八ルート
わけもわからずスタートしてしまった新八は、早速銀時や神楽を見失い、途方に暮れる。
真選組屯所には何度か訪れているものの、かくれんぼが出来るほど敷地内の事を知っているわけではない。
どうしたものかと悩んでいると、肩を叩かれ慌てて振り向いた。
「ごめん、驚かせた?」
「い、いえ、見つかったのかと思って」
「まだ大丈夫だよ。それより、隠れる場所のアテなんてないでしょう。だから、一緒に隠れない?」
悪戯っ子のように目を輝かせて提案してきた遼に驚きつつも、新八は「お願いします」と頭を下げる。
「でも、遼さんがノリ気なんて意外ですね」
「どうせなら、最後まで残って罰ゲームを沖田さんに命令しようと思って」
「沖田さんに?」
「うん。いつもの仕返し」
不敵な笑みに、新八はますます驚いた。
姉と同い年という遼は、出会った時は見た目の大人っぽさも手伝って、随分年上に感じていたのだが、表情が豊かになってきている。きっと、良くも悪くも真選組に感化されたのだろう。
「沖田さんにはいつも意地悪されてるから、たまにはね。まあ、あんまり酷い事すると後が怖いから言えないけど」
「確かに。倍返しどころか、百倍にして返されそうですもんね」
「そうそう。じゃあ、行こうか」
当たり前のように手を取られ、新八は一瞬驚いて顔を赤らめるが、遼に他意が無いことに気付き、冷静になった。
繋がれたままの手の温かさや柔らかさに意識を向けないように、ゆっくりと小さく深呼吸する。
暫く歩いて蔵のような場所に着くと、遼はよいしょと扉を開けた。
「何ですか、ココ?」
「拷問部屋」
「ええっ!?」
「大丈夫、今日は使ってないから」
笑顔で答える遼に、そういう問題ではないと思いながら部屋を見渡す。
梁に渡された太い縄や、中央に鎮座する縦長の樽など、拷問の様子が窺えて、新八は背筋がゾクリと震えた。
「何かね、その辺の拷問器具とかは使ってないみたい。見た目重視で用意してるんだって」
「へぇ……」
「こっちは見つかるから、奥に行こうか」
「はい」
遼の後をついて行くと、堆く積まれた段ボールの前で立ち止まる。
その山をずらして僅かに隙間を作ると、遼は満足げに頷いた。
「この辺りに隠れようか」