第16章 企画(沖田・新八夢)
数日後
「いい天気ですね」
真選組屯所の縁側で、遼は自分の膝を枕にして寝転ぶ沖田の髪を梳くように撫でる。
例のかくれんぼ大会で沖田が望んだ罰ゲームは、「遼の膝枕」という、遼にとっても、他の面々にとっても意外な要望だった。
「でも、良かったんですか?」
「遼はもっと過激な罰ゲームが良かったのか?」
「まさか。いつもの沖田さんならもっと色々要求するかと思っていたので、拍子抜けしちゃったんです」
「今からでも要求してやろうかい?」
「謹んで遠慮します」
くすくすと笑いながら、遼は穏やかに流れる時間に身を委ねる。
真選組としての日常から切り離されたかのようなこの空間は、何とも擽ったく、居心地の良い物だった。
妙に触り心地の良い沖田の髪を撫でていると、ゆるゆると眠気がやってきて、遼は欠伸をかみ殺す。
「眠ぃのか?」
「んっ……ちょっと」
「どうせ誰も咎めやしねぇ」
「副長が帰ってきたらどやされます」
「どやされる?」
「ああ、えっと……叱られるって事です」
苦笑した遼に、沖田は寝転んだまま手を伸ばしてその頬に触れた。
「そん時ゃ俺が、守ってやるよ」
「すごい殺し文句ですね」
「……通じなきゃ、意味ねぇぜ」
いくらかガッカリした様子の沖田に、遼はほんの少し困った顔で「通じてますよ」と、ごく小さな声で応える。
その声が聞こえていたのか、沖田はアイマスクを装着して遼から顔を背けた。
髪の毛から覗いた沖田の耳は赤く染まっていて、遼は胸がすくような思いに目を閉じる。
「本当にいい天気ですね。──そうだ、一眠りしたらどこかにお出かけしましょうか。たまには、二人きりで」
遼の誘いに小さく「ああ」と返事をして、沖田はアイマスクの下で目を閉じた。
──おわり──