第16章 企画(沖田・新八夢)
「ったく、何でこんなバカバカしい事しなきゃならねぇんだよ。オイ山崎、そっちはどうだ?」
「やっぱり居ませんね。というか、沖田隊長は言い出したら絶対引かないから仕方ないですよ。この調子だと、本当に一人だけ隠れきって、全員に罰ゲームとか言い出すんじゃないですか」
「そうなる前に見つけるぞ」
土方は遼と沖田が潜むロッカーの前に立つと、把手に手を掛けた。
「あ、ダメですよ副長。そのロッカー壊れてて、閉めると開かなくなるんです。というか、そんな所に隠れられませんよ」
「……それもそうだな」
足音が遠ざかり、土方達が部屋を出て行く気配を確認して、遼と沖田はホッと息をつく。
「行ったみてぇだな」
「そうですね。あの、沖田さん……さっき嫌な話を聞いた気がするんですけど」
「壊れてるって言ってたな」
「でももしかしたら……開かない」
押しても引いても開かない扉に、遼は焦りを覚えるが、沖田は淡々とした様子で扉を一度強く蹴った。
「!?」
「本当に開かねぇな」
「壊れたらどうす──え、うそ」
「どうした?」
「扉が、ぴくりとも動かなくなりました」
先程までガタガタと動いていた扉がどこかにハマってしまったようで、完全に余裕が無くなっている。
「出られねぇなら、時間までここに居るしかねぇな」
「ええっ、そんなぁ」
「別にいいじゃねぇか。ここなら見つからねぇだろ」
「それはそうですけど……」
ロッカーの中は狭く、二人は殆ど隙間が無いほど密着しているし、随分と蒸し暑く、暑さが苦手な遼にとっては些か辛い状況だった。
(ああ、ヤバい……汗が)
首筋や胸元に汗が流れるのを感じ、遼はどうにか出来ないかと思案するが、ますます気温が上がっていく。
「あの、沖田さん……上着を脱いでもいいですか?」
「は?」
「暑くて、ちょっと耐えられそうにないので」
「ああ……どうせなら、脱がせてやろうか?」
「結構です」
伸ばされた沖田の手を払い、遼は隊服の上着を脱いで下に落とす。
ブラウス姿になった遼は、ほっと息を吐いて体をロッカーに凭れさせた。
「本当に暑さに弱えぇな」
「体質ですから。というか、沖田さんは大丈夫なんですか?」
「この程度でバテてりゃ世話ねぇぜ」