第15章 失われた日々(銀時裏夢)→(土方夢)
間もなくして徳川茂々公がお隠れになり、真選組が江戸を追われる。
始まってしまった激動の時代に巻き込まれた銀ちゃんを探すことも出来ずに時間は無情にも過ぎていき、気付けば江戸の町は戦禍に襲われていた。
私は、銀ちゃんの所在を掴んではいたものの、出来ることなど何も無く、生き延びるので精一杯で……
そうして気付けば、三年近くの月日が流れていた。
そして今、私は復興した江戸で何とか生活を取り戻し始めている。
「お見合い、ですか?」
「そうそう。遼ちゃんも年頃でしょう。会うだけでもいいから、ね?」
伯母の商売の取引先から紹介されたという男性との見合い話が持ち上がり、私はあまり考えずに承諾した。
伯母には金銭的にも世話になっている手前、断りきれなかったのもあるが、忘れようとしていたのかもしれない。
彼への恋心を。
あれよと話は進み、見合い当日になって私は大事な事を思い出した。
「私、誰とお見合いするんだろう?」
釣書と写真は両親が確認していたし、あまり興味が無かったので伯母の話にも適当に相槌を打っており、正確な情報を覚えていない。
「確か、公務員で、伯母さん好みの色男で、それから──」
頭を悩ませていると、仲居さんが呼びに来て、私は目いっぱい大きな猫を被った。
通された部屋に入った私は、その人達を見て絶句する。
「ほら、遼ちゃんも座って」
強引な伯母に促されて座った私は、改めて正面に座る人物をまじまじと見てしまった。
はしたない、と伯母に膝を叩かれて慌てて背筋を伸ばす。
「お忙しいのにごめんなさいね。じゃあ、始めましょうか」
お願いしますと頭を下げて、どうしようかともじもじしていると、伯母さんが私の紹介を始めたので、とりあえずお嬢さんぽく振る舞ってみた。
(笑顔、笑顔……出来るかぎり目線を……だめだ、目が合った)
正面に座った人物ではなく、その隣でにやにやとしている顔馴染みの人物と目が合ってしまい、口元がひくつく。
彼はこの状況を面白がるためだけに来たんだろうか。
「では、こちらからも紹介を。改めて、遼さん、仲人を務める近藤です。隣が土方十四郎。真選組の副長を勤めていて、武州の出身、歳は三十になったばかりだ」
黙って頭を下げたお見合い相手──土方さんに、私も慌てて「お願いします」と頭を下げる。