第14章 募る想い(土方裏夢)
食事を済ませて自宅に戻ると、遼は大きく息をつく。
「はあっ、お腹いっぱい」
「遼氏、大丈夫かい?」
「ちょっと調子に乗って食べ過ぎちゃいました。腹ごなしに洗濯物取り込んできますね」
「手伝うよ」
にこにこと着いてくるトッシーに、遼は断る事も出来ず、「じゃあ、お布団を」と頼む。
その後もトッシーは、遼の傍を離れる事無く一日を過ごし、気付くとすっかり外が暗くなっていた。
「そろそろ晩御飯にしますか?」
「いや、今日はあまりお腹が減らないから、お風呂にするよ」
「じゃあ、用意してきますね」
そう言って風呂場に向かった遼を見送って、トッシーは土方の自室に向かい、昼間に見つけた自分の洋服を広げて一人ごちる。
「十四郎、やっぱり僕は遼が好きみたいだ。だから少し、狡い手段をとるよ」
ファンクラブの会員証を土方の目につく場所にしまっていると、遼がトッシーを呼ぶ声が聞こえて風呂に向かった。
手早く風呂を済ませたトッシーは、遼が入浴している内に台所に行き、それを用意する。
「確か、ここに……ああ、あった。じゃあ後は、これとこれを出して……」
準備した物を並べて、トッシーは満足げに頷いた。
そこに、風呂上がりの遼がやってきて声を掛ける。
「トッシーさん?」
「ああ、ちょっと台所を借りたよ。今夜は一緒に晩酌をするでござるよ」
「いいですけど……私、あまり沢山飲めませんよ」
「大丈夫。雰囲気程度でいいから。じゃあ、縁側に行こうか」
トッシーは晩酌の用意を載せた盆を手に、やや強引に遼を促した。
遼は手の塞がったトッシーの代わりに襖を開けて、先に縁側に出る。
「ありがとう遼氏、じゃあ飲もうか」
「は、はい」
トッシーの隣に腰掛けて、差し出された御猪口を受け取ると、半分ほど酒が注がれた。
「結構強いから、少しずつ飲むと良いでござる」
「ありがとうございます」
口をつけると、甘い香りと共にアルコールが舌先を刺激する。
「んっ、はぁっ……」
「遼は本当に、お酒に弱いね」
「美味しいとは思うんですけどね。トッシーさんは、お酒が好きなんですか?」
「いや。でも少し、十四郎みたいになってみようと思ったんだ」