第14章 募る想い(土方裏夢)
翌日もトッシーが土方に戻る事はなく、遼は再び近藤に連絡を取り、今日も土方が休めるように手筈をした。
近藤からは「せっかくだから1週間くらいゆっくりしたらいいよ」と言われ、一先ずそれに甘えさせて貰う。
「今日はどうしましょうか。お家でゆっくりしてもいいですし、行きたい所が有れば行ってみます?」
「そうだね。じゃあ、少し出かけてくるでござる」
「え、あ、え?」
そそくさと出て行ったトッシーに、遼は引き止める間もなく置いていかれた。
一緒に過ごすと思っていただけに、拍子抜けしてしまう。
「……一人で大丈夫かな。まあ、前にも色々あったみたいだし大丈夫か」
結局トッシーが戻ってきたのは夕刻近くで、疲れた様子のトッシーは夕飯もそこそこに居間で眠ってしまった。
「トッシーさん、こんな所で寝たら風邪ひきますよ」
揺り起こしても反応がないので、遼はトッシーに布団をかける。起きる様子も無いトッシーに、遼は諦めて床についた。
遼がすっかり眠ってしまった頃に目が覚めたトッシーは、遼の居る寝室へと向かい、そっと襖を開く。
薄明かりの中、布団に包まっている遼の姿が見え、音を立てないように傍に行くとその寝顔をのぞき込んだ。
「……遼氏」
ごく小さな声で呼んでみるが反応は無く、トッシーはほっとした表情で眠る遼の頬に触れた。
記憶の中での遼は、土方に触れられると嬉しそうに頬を染める。
それに気を良くした十四郎が、用も無く何度も遼に触れていたのを、トッシーは知っていた。
「こんな気持ちだったのか」
触れるだけで、体温が上がったような気がする。
触れるだけで、幸せだと感じた。
「十四郎、拙者は──」
「んっ、」
遼が寝返りをうち、寝間着の隙間から肌が露わになる。
白い肌。
柔らかな──
十四郎の記憶が蘇り、トッシーは慌てて厠に飛び込んだ。
熱を持った下半身が苦しそうに主張し、心臓がドクドクと脈打つ。
「はあっ、っ」
幾ら自分で慰めても、この想いが昇華されるわけではない。けれど、あの時のように想いが形になる事を望んでしまった。
この想いが真実である以上、もう後戻りは出来ないと、トッシーは静かに息を吐いた。