第14章 募る想い(土方裏夢)
買い物をして自宅に戻った二人は、夕食を済ませてゆっくりとお茶を飲んで過ごしていた。
「今日は大変でしたね」
「うん。でも、その……えっと、遼氏は疲れていないかい?」
「大丈夫ですよ。そうだ、トッシーさん、お風呂沸かしたので入っちゃって下さいね。寝間着は十四郎さんので申し訳ないですけど」
「僕と十四郎は同じだから、大丈夫だよ」
「?」
微笑んだトッシーに、遼は違和感を覚えるが、それを言葉に表す事が出来ず、眉を寄せる。
遼が悩んでいると、トッシーは「お先に」と風呂に向かって行った。
「……寝間着用意してこよう。あっ、お布団どうしようかな。とりあえず、お客さん用に寝てもらえばいいか」
客間に布団を用意してから、土方の寝間着を出して風呂に向かい、浴室に声をかける。
「トッシーさん、着替え置いておきますね」
「うわっ、うん、あ、ありがとう」
上擦った声が返ってきて、遼はくすりと笑った。
こういう時、大概揶揄うのはいつも土方の方で遼は翻弄されるばかりだが、トッシーが相手だとそれも違うらしい。
(十四郎さんだと「一緒に入るか」なんて揶揄われるけど、トッシーさんだと恥ずかしがるのね)
微笑ましいと思いながらも寂しく思ってしまい、遼は慌てて首を横に振った。
(悪い方に考えちゃだめ。大丈夫、まだ一日じゃない)
もやもやと浮かぶ思いを断ち切るように、大きく一つ頷くと、気分を変えようと縁側に出る。
珍しく天人の船があまり飛んでおらず、いつもより星がよく見えた。
ぼんやりと空を眺めていると、風呂から上がったトッシーに声をかけられて引き戻される。
「遼氏?」
「っあ、ごめんなさい、もう上がったんですね。お布団は客間に用意したので、使って下さい」
「えっ、あ、あの、遼氏は」
「私は寝室にいますから、気にせずゆっくり過ごして下さいね」
にこりと笑った遼に、トッシーは何か言いたそうに口を開いた後、俯いて小さく「ありがとう」と答えた。
「じゃあ私も、お風呂に入ってきますね。何か有れば、遠慮無く声をかけて下さい」
トッシーが頷いたのを確認し、遼はやや足早に風呂場へと向かう。
その背中を見送って、トッシーは盛大に溜息をついた。