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魂の色【銀魂短編夢】

第14章 募る想い(土方裏夢)


銀時からすれば、実に揶揄いがいが有るのだろうと。

「程々にしないと、馬に蹴られますよ」

呆れた様子で忠告する新八に、銀時は余裕綽々「大丈夫だよ」と答え、食事を再開した。
後々後悔することになるのだが、それはまた別の話だ。
甲斐甲斐しくトッシーの世話をやく遼の様子は、新八の目から見れば十分夫婦に見えたが、それでもやはり、トッシーは十四郎ではない。

「ごちそう様でした。遼さん、片付けは僕がしますから、鍛冶屋に行ってみて下さい」
「有難う新八くん。あ、煮物の残りは冷凍庫に入れてるから、良かったら食べてね。神楽ちゃんにも宜しく」
「はい。じゃあ、また。色々と、うまくいくよう願ってます」

何とも言えぬ表情で見送る新八を不思議がりつつも、遼とトッシーは万事屋を後にした。
帰り際、銀時がトッシーを引き留めて何事かを囁いていたが、遼の耳には聞こえず、耳まで赤くなったトッシーに尋ねても、無言で顔を背けられてしまう。
銀時の様子から、碌でもない事だとは想像出来たので、遼は追求を諦めて鍛冶屋へと足を向けた。
だが、鍛冶屋では望んだような回答は得られず、結局何の収穫も無いまま二人は帰路につく。

「残念でしたね」
「あっ、ああ、うん……」

万事屋を出てからこちら、どこか上の空のトッシーは、遼と目を合わせようとはせず、少し距離を置いていた。
その理由がわからない遼は、逡巡した後、トッシーの袖を引いて歩き始める。

「えっ、ちょっ、遼氏?」
「夕飯の買い物に行きましょう。今日は、トッシーさんの好きな物を作りますから。ね?」

遼の笑顔に、トッシーは一瞬目を奪われた。
まるで少女マンガのように視界がキラキラとして、心臓が跳ねる。
自覚をした瞬間、トッシーは諦めて全てを受け入れる覚悟を決めた。

(十四郎、僕は──)

後々恨まれる事になったとしても仕方がないと、トッシーは拳を強く握り締める。
どんな結末になったとしても、きっと自分は後悔しないだろう。

「トッシーさん、何が食べたいですか?」
「僕は──」

トッシーは遼の問いに答えながら、せめて二人で過ごす残りの時間が穏やかであればと、強く願った。
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