第14章 募る想い(土方裏夢)
「限定物フィギュアや、DVDの発売日とかかな。後、一度だけイベントに行った事もあるよ」
「……」
明らかに嫌悪感を浮かべる沖田の膝をパシリと叩いて、遼は「じゃあ」と言葉を続ける。
「もしかして、何か用事が有ったんですか?」
「いや。僕の覚えている限り何にもないんだ……強いて言うなら、昨日の深夜にトモエ5000の一挙放送が有ったけど」
「それが見たかったとかじゃねぇんですかィ?」
「その、夕べは十四郎が……」
もごもごと躊躇いながらチラリと遼を見たトッシーに、沖田はなるほどと頷いた。
「土方さんは遼とヤってたから、アンタは出てこれなかったってワケか」
「おおおお沖田さんっっ!」
「別に夫婦なんだからヤることヤってたっておかしかねぇだろ。想像したくねぇからあんまり言わせんな」
「想像しないで下さい!」
顔を赤くして動揺する遼を横目に、沖田はトッシーを一瞥する。
トッシーは遼をじっと見つめていて、その様子は土方十四郎そのものだが、十四郎であればこの状況に黙ってはいないだろう。
声を荒げ、沖田を牽制するはずだ。
「理由はわかんねぇって事がわかったな」
「それ、一歩でも進めてますか?」
「さあな。後は、刀鍛冶にでも聞いてみたらどうだ。万事屋の旦那が良い刀鍛冶を知ってる筈だぜ。じゃあ俺はこれで」
「帰っちゃうんですか?」
「ココにいても、胸クソ悪くなるだけだからな。ああ、遼」
沖田はちょいちょいと遼を手招きすると、トッシーに聞こえないよう耳打ちする。
「土方さん不在だと、持って半月だ。いざとなったら俺がアレをへし折ってやるよ」
ニヤリと笑った沖田に、遼は少し困った顔で「心に留めておきます」と答えた。
「見送りはいいぜ」と言って沖田は土方家を後にする。
遼は溜息を一つつくと、食卓を片付けながら困惑しているトッシーを安心させようと笑いかけた。
「沖田さんの意地悪はいつもの事ですから。とりあえず、気長にいきましょう。有給も溜まってますし」
「う、うん……ありがとう」
「お台所片付けてきますね。トッシーさんはゆっくりしていて下さい」
お盆を手に台所に行った遼は、少し悩んでから携帯電話のアドレス帳を開き、「銀さん」と表示された画面を押さえた。