第14章 募る想い(土方裏夢)
「要らないんですか!?」
「十四郎はマヨネーズが好きみたいだけど、僕は別に……」
「じゃあ、煙草は?」
「どちらかと言えば嫌いかな」
「ええっ!
あっ、ごめんなさい。びっくりしちゃって」
すっかり感心した様子の遼に、トッシーは遠慮がちに尋ねる。
「十四郎がマヨネーズや煙草を吸うのが嫌なのかい?」
「嫌というか……いえ、別に十四郎さんが稼いだお金なんでいいんですけど、やっぱりもうちょっと健康に気を遣って欲しいなって」
「君は、優しいでござるな」
「へ?」
ふっと笑ったトッシーに、遼の顔が赤くなった。
いつもと違う表情に、遼の方がドギマギしてしまう。
「遼氏?」
「わっ、あっ、食べましょう、冷めちゃいますから!」
「あ、うん……ああ、美味しい」
「っ──、反則ですよソレ」
思わず顔を背けた遼に、トッシーは首を傾げた。
「遼氏、どうかしたでござるか?」
「十四郎さんは、あんまり料理の感想とかは言ってくれないので、ちょっと……ううん、すごく嬉しいです」
頬を染める遼に、トッシーも顔を赤らめる。
「僕が美味しいって思うんだから、十四郎もそう思ってるよ……多分」
「そう言ってもらえると、自信が持てます。ありがとうございます、トッシーさん」
微笑んだ遼に、トッシーは全身がゾクリと震えた。
それを遼に悟られまいと、慌てて食事をかきこむ。
(遼氏は、十四郎の──)
ちらりと目線を上げると、遼はその小さな口を開けて食事をしている所で、トッシーはますます下半身に熱が集まっていくのを感じ、ごくりと喉を鳴らした。
蠢くのは、醜い感情。
欲と言った方が正しいのかもしれない。
食事を続けながらも、トッシーは遼の動きをじっと見つめていた。
「そうだ。後でトッシーさんの事がわかる方が来て下さるみたいなんです」
「僕の事を?」
「はい。多分真選組の方だと思いますよ」
一足先に食事を終えた遼は、お茶をいれる為に台所へ向かう。
その背中を見つめながら、トッシーは何故か不安に駆られていた。
真選組は、土方がトッシーであることを望まない。
OFCの時のように、どうにかトッシーを排除しようとする筈だ。