第14章 募る想い(土方裏夢)
「トッシーさんは、私が誰かは知っていますか?」
「う、うん。遼氏は僕の……じゃなかった、十四郎のおっ、お嫁さんだろ?」
「お嫁さんなんて、初めて言われました」
妙な事に関心していると、トッシーが窺うように遼の顔を見た。
「遼氏は、その……僕が嫌じゃないのかい?」
「嫌って、どうしてですか?」
「僕なんて、ヘタレだし、オタクだし、十四郎みたいに強くないし……」
「そう言われても、私はトッシーさんの事をよく知りませんから。トッシーさん、あなたの事は十四郎さん以外は知らないんですか?」
遼の問いに、トッシーは首を横に振る。
「近藤さんや、沖田氏、あと、坂田氏たちも知ってるけど……」
「じゃあ、近藤さんに連絡しますね。ちょっと待ってて下さい」
遼は早速携帯電話を取り出し、近藤に電話を掛けた。
「もしもし、朝早くに申し訳ありません。いつもお世話になっております、神武──じゃなくて、土方遼です」
『おお、遼ちゃん。どうかしたか?』
「実は、十四郎さんがトッシーさんになってしまって」
『トッシーって、あのトッシーか?!』
「多分、あのトッシーさんです。それで、今日は一日自宅で様子を見させて頂いてもいいですか?」
『あっ、ああ、今日は緊急の事件も無いし、構わない。後で事情がわかる者を向かわせるから』
「すみません。ありがとうございます」
電話を切った遼は、不安げなトッシーを見て「大丈夫ですよ」と微笑む。
「とりあえず、朝ごはんにしましょう。顔を洗ってきてください」
「あ、うん……」
意外にも素直に洗面所に向かったトッシーを見送って、遼は台所に戻り朝食作りを再開した。
突然の出来事に驚きはしているが、見た目が土方のままなので、あまり違和感を感じずにいる。
「私って、意外と順応性高かったんだなぁ」
そんな事を吞気に考えながら用意した朝食を居間に運ぶと、戻って来たトッシーが所在なげに座っていた。
「お待たせしました。どうぞ、召し上がって下さい」
「ありがとう、遼氏」
「あ、マヨネーズ持ってきますね」
「ぼ、僕はマヨネーズは要らないから」
その一言に、遼は今までで一番驚く。