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魂の色【銀魂短編夢】

第12章 期別(高杉夢)


ねぇ、晋ちゃん。
あなたを喪ったこの世界で、

私は今──、

あなたに会いたい──













立ち上る線香の香りに、遼は閉じていた目をゆっくり開く。目の前には、小さな墓標が三つ。
どの墓前にも、色鮮やかな花が供えられている。

「悪ぃ、遅くなった」

その声に笑顔で振り返ると、銀時と桂、坂本が、それぞれ土産を手に立っていた。

「みんな、ありがとう」
「礼を言うのはこちらだ。全て任せてしまったからな」
「そうぜよ。結局わしらはなんも出来んかった」
「みんなが居たから、こうして帰ってこれたんだよ」

名前を刻む事も出来ない墓標を振り返った遼は、そこに眠る彼らに思いを馳せる。
一つは、高杉が作った兄弟子の為の物だ。
後の二つは、遼がそれに似せて作り、高杉と松陽の為の物とした。

「晋ちゃんは納骨出来たんだけど、松陽先生のは空のままなんだよね」
「仕方ねぇだろ。ま、別にいいじゃねぇか」
「遼が覚えていれば、先生も満足してくれるだろう」

ふっと笑って墓標の前に立った桂は、土産の風呂敷から握り飯を取り出して供えると、黙って手を合わせる。

「なんじゃ、ヅラはそんなもんを持って来たんか。わしのこれとは相性が悪いぜよ」

そう言って、坂本は握り飯の横にポカリとヤクルコを供えた。

「貴様、墓参りにそんな物を持って来たのか」
「わしは高杉の好みしかわからんき。高杉と言えばこれじゃろ」

ガハハと笑う坂本に、遼と桂もつられて笑う。

「で、銀ちゃんは?」
「……忘れた」
「嘘ばっかり」

にやにやと笑う遼に、銀時は顔を顰めて渋々包みを開いた。

「お酒、と……写真?」
「この間撮ったんだ」

数枚の写真には、江戸の今の風景が収められている。
その一枚一枚が鮮やかで、遼は目を細めた。

「晋ちゃんが、松陽先生が、朧さんが──みんなが守った未来だね」
「ちゃんと報告しとかねぇと、化けて出そうな連中だからな」
「確かにな」
「あはははは、出るとしたら金時の所じゃなかがか。おまんが一番怖がりじゃき」
「誰が怖がりだ。俺はよくわかんねーもんが嫌いなだけだよ。あと、俺は銀時だ!」

いつものやり取りが始まり、四人は顔を見合わせて笑う。

「みんな、変わらないね」
「今更そうそう変われまいよ」
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