第12章 期別(高杉夢)
『晋ちゃん』
遼の声が聞こえて、高杉は微笑んだ。
「何でこんな所に来たんだ?」
そう聞きたいのに、声が出ない。
「これは、夢か……?」
夢だとしたら、何て幸せな夢だろうか。
ずっと会いたくて堪らなかった人が、目の前にいる。
手を伸ばせば、触れられそうだ。
「伝えたい事があるんだ」
想いは溢れているのに、言葉がでない。
もどかしさに、思わず顔を顰める。
どうしようかと思っていると、遼が高杉の髪をすくように撫でた。
黙って自分を見つめる遼の目はどこまでも穏やかで、高杉は今の状況を思い出す。
「ああ、そうか。俺は、死んだんだな」
『晋ちゃん、あなたの望みは叶った?』
かき消えそうな遼の声に、その時が近いのを感じる。
「そうだな、きっと俺の望みは叶ったよ。
銀時が、アイツらが叶えてくれた」
長い永い道程だったけれど、最期に見たかった顔も見られた。
こんなに幸せな事は他にない。
それに最期の瞬間に、こんな夢まで見られたのだ。
「ありがとな、遼。それから、すまなかった。俺ァ、お前のために生きてやれなかった」
もう、抱きしめる事も出来ない。
ただ一つ、後悔が有るとすれば、きっと。
『生きててほしかったよ……だって、私はあなたを───』
「そうだな。もう、伝えることはできねぇみたいだが、俺は、お前を───」
『愛しているから』
「愛していた」
そう、伝えられなかった事だけだろう。
終