第2章 尋問、そして静寂
少女は怯えながら静雄の方に視線を向ける。
「大丈夫、何もしないから。あいつは乱暴者だけど、本当はいい人なんだよ?それともあいつに何かされたのかな?だから殺そうとしたの?」
「……いいえ」
「じゃあ、どうしてあのサングラスの人に消えて欲しかったの?」
「…………殺し屋だから」
「え?」
「私の父や祖父が、静雄っていう名前の殺し屋に殺されるって言われたんです。
けど、父たちの所にも帰れないし、どうしたらいいかよく解らなくなって」
嫌な予感がした。おそらく、背後に立つバーテン服の男も同じ予感に辿り着いただろう。
「……で、あのスタンガンは?」
「これならやっつけられるって、くれたんです」
「誰が?」
「私が家出する時、色んな事を教えてくれた人です」
「その人が、静雄が殺し屋だって言って、スタンガンもくれたの?」
コクリ頷く少女に、新羅は肝心の質問を投げかけた。
「何て名前の人かな?」
決定打となるその質問に、少女は一瞬躊躇ったが、おずおずとその名前を口にした。
「……“イザヤさん”」
ゾクリ、と新羅に悪寒が走る。冷や汗を掻きながら、ゆっくりと後ろにいる男へ振り返る。
するとそこには――柔らかい笑顔を浮かべる、静雄がいた。
「はは、それは誤解だよ、ちゃん」
「え……」
「イザヤ君は、俺の事を勘違いしているんだよ。俺は殺し屋なんかじゃない」
「……本当、ですか?」
「ああ、本当さ!イザヤ君とは友達なんだけど、ちょっと喧嘩しちゃったんだ。ちょっと今から仲直りしてくるよ」
に対して無邪気なウインクをして見せ、部屋の外に出る静雄。
新羅は自分の全身に冷たい汗が流れてる事に気付いた後、心中だけで呟いた。
――臨也の奴……人生にもう飽きちゃったのかな……