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とある、非日常の中の少女の日常。

第2章 尋問、そして静寂


―5月4日・早朝/某高級マンション―

「あ、眼を覚ましました!」

「解った、今行くよ」

昨晩、セルティと共にマンションに来た杏里が自ら少女の看病をやると言い出したのだ。

新羅は流しで手を洗い、検査鏡などを手に寝室へ向かう。

「そういえば、あの子の事をセルティに伝えるの忘れてたなぁ。
(―――まあ、なんかすごく忙しいみたいだったから、後でもいいか……)」

扉をあけると、てっきりぼんやりと眠っていると思った少女が、ベットから部屋の隅に移動し、小刻みに震えている。

どうやら熱による震えではないようで、少女の視線の先には静雄の姿がある。

「……俺は何も話さない方がいいのか?」

「静雄が何言っても刺激するだけだと思うから、黙ってた方がいいと思うね、うん」

そう言うと、新羅は少女に手を差し伸べる。

「大丈夫かい?顔色は良くなったけど、とりあえず熱を測ろう」

「私も、殺すの……?」

「……『も』って何だ、『も』って」

「やっぱり、君はいつの間にかこの子の大切な人を……」

「……手前を俺の殺人履歴の第一号にしてやろうか……?」

「子供の前だ、後にしとけ」

新羅は警戒する少女の額に軽く手を当てる」

「うん、熱は下がったね」

「……あ、貴方は誰ですか?平和島静雄さんの仲間、ですか?」

「ただの腐れ縁だよ。安心して、あいつには君に手出しはさせないから。だけど、その為には、君にも話して欲しい事があるんだ」

新羅は少女と同じ視線の高さになるまでしゃがみながら、自らの子供のように話しかける。

「君の名前を教えてもらっていいかな?」


「……」

「ちゃんか。名字は?」

「……」

どうやら話したくないのだと判断した新羅は、あえて追求せずに次の質問を口にした。


「どこか苦しい所はない?喉が痛いとか、腹痛とか、平気?」

新羅の言葉にはコクリと頷いた。

「そっか……良かった。じゃあ、昨日の事を聞いても大丈夫かな?」

「……」
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