第1章 出会い
―30分前・池袋サンシャイン60通り―
「死んじゃえ」
(――あ?)
比較的長身の部類に入る静雄は、懐に飛び込んできた少女の言葉が聞き取れなかったが、トムはその言葉を聞き取り、驚いた表情をしている。
バチリ、と激しい音がして、青白い花火が飛び散った。
「あ痛ッ」
そう軽く呟くと、少女の手を払いのけた。
「あッ!」
少女の手から、四角い機械がこぼれ落ちる。
「……ってーなー……。何だぁ一体?なんだこれ?」
「何だこりゃ?スタンガン?」
少女とスタンガンという構図が結びつかず、暫し考え込んでいたのだが――
手にはスタンガン。足元には膝をついている少女。
自分たちがどういう状態かをトムが素早く客観的に理解した。
「あ、やべ。さっきの強盗逮捕しに来た警官だ。とりあえず逃げんべ。言い訳できる状況じゃねぇ」
「……え、ええー?」
釈然としない表情のまま、トムに続いて走り出す。
逃走する静雄は、自分の背中がいつもより重い事に気が付いた。
走りながら振り返ると、先刻の少女がいつのまにか静雄の背中にしがみついていた。
「逃げちゃ……駄目ぇ……タヒんでよ……!」
「……トム先輩。この子、どうしましょう」
「うわ、面倒くせぇ事になってるッ!とりあえず、知り合いの家とか無いか!?町中それじゃ目立ちすぎる!あ、お前の弟の家は!?」
「いっつも誰か雑誌記者みてぇのがいますよ。……闇医者なら、まあ、巻き込んでも問題無いと思います」