第1章 出会い
「話は解った……。俺に言えることはとりあえず一つだけだ。なんで誘拐なんかしたんだ!」
キュキリ。
妙な音がした方を向くと、静雄がこぶしを握りしめているのが見えた。
静雄が手を開くと、アルミホイルのように丸められた、それまでスチール製のコップであった筈の物体があった。
「悪ぃな。弁償する」
「……いいよ。ちょうど新しいのが欲しいと思ってたとこだ」
新羅は冷や汗を流しながら目を逸らし、少女が先刻よりも震えていることに気づく。
「大丈夫だったかい?もう安心だよ?あんなに恐そうな人たちに連れ回されて大変だったろうけど」
「……」
少女は全くの無言で、気丈な態度を見せているが、それにしては震えが酷い。
そんな少女に違和感を覚え、少女の額にぺたりと手をつける。
「……奥の部屋の押し入れに、客用の毛布があるから、それを出して!」
「?」
「この子、すごい熱だ!すぐにお湯を沸かして!」
新羅の言葉を聞き、にわかに騒がしくなるマンション内。
そんな内、少女は張り詰めた糸が切れたように、クタリと身体を倒し、そのまま意識を失った。