• テキストサイズ

【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】

第10章 零の奪還



『う…、志保ってば…』

項垂れるを志保は抱き締めた。

「良かったわよ、2人とも元気そうで。本当に…」

心から安堵する声だった。

『うん、…ありがとう』

逐一の状況は、情報として志保の耳にも届いていた。
しかし、船上で通信の途絶えた時、志保は拭いようのない焦りに陥った。
実際にと顔を合わせるのは、工藤邸から送り出して以来になる。

『心配かけちゃったね』
「はいつもそう…」
『ごめんてば…』

心配をかけた友人を、も抱き締め返した。

「坊やが大人しくなった途端、君たちが心配の種になるとはな」
「世話をかけたな…、赤井」
「無事なようで何よりだよ、…降谷君」

いまだ2人のわだかまりは完全に解けていない。
それでもを通じて起こった様々な出来事に、変化は見られた。
降谷が剥き出しにしていた赤井への敵意は、見受けられない。

がパイプ椅子を並べて、各々が腰をかけた。
事件解決の大団円とはいかないものの、空気感に重々しさの類いはない。
ジンを逃したことはすでに伝わっているはずなのに、ジョディと同様に、それを咎めることはなかった。

「安室さんもさんも無事で良かったぜ」
「全くよ、あなたたち無茶しすぎなのよ」
「似た者同士というわけか」

そんな会話を、は不思議な思いで眺めていた。
属する組織も立場も違う中で、降谷奪還の協力をあおいだ時の感覚に似ている。
あの時はどこかまだ、自身を俯瞰的な立場から見ていた。

『…なんだか、こうして自分が輪の中にいるのが不思議な気分…』

全ての記憶を取り戻した分、それは明瞭に思えた。
自身の生の中で、普通の人のように誰かと過ごすことに、不思議な気分になっていた。

「バカね、いまさらよ?」

志保もおそらく同じような思いをしてきただろうと、は察した。
組織から姿を消したシェリー。
新一と出会い、仲間を得た志保もまた、随分と感情表現が豊かになっている。
が降谷に出会うことで変化が生まれ、この先も降谷や志保や皆と過ごすことで、この状況を不思議と思うこともなくなるのかもしれない。

『ふふ、うん。いまさらかぁ…』

はにかむと少し幼く見えるの手を、降谷はそっと握りしめた。
/ 299ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp