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短編集【果物籠】

第1章 何処にいても【潑春】



「えっと…」


彼女たちは私の言葉を聞き逃さないようにと更に詰め寄ってくる。



——— 前世で、生き別れた姉妹…




「生き…別れた、姉弟…?」


「ええええぇぇぇえぇぇえ!?!?」



やってしまった。

彼が言っていたことがふと頭に浮かんで思わず言ってしまったが、彼女達の声を聞いて他の生徒も集まってくる。


その面白そうなネタを掴んだ彼女たちは、まるで水を得た魚のように目をキラキラさせながら集まってきた生徒たちに広め始めていた。


やってしまった。


え?どうするコレ?


周りが好奇の目で見てくるのに耐えきれず、屋上まで一目散に走った。




いや、本当にやってしまった。

生き別れた姉弟って…ダメだろ。
普通に考えてダメでしょ。コレ。


でも、私のせいで彼が悪く言われるのが嫌で思わず言ってしまった。

まったく考え無しだった。

これだと違う意味で彼に迷惑がかかる。

もう、本当にどうしよう。



塔屋で頭が地面に着くんじゃないかというほど項垂れた。


そのまま一時間程、後悔と1人反省会をしていると屋上の扉が開く音が聞こえた。




まさか…と身構えているとパッと真っ白の髪の彼が現れた。先ほどの殺気塗れの表情ではなく、いつもの穏やかな彼だった。




「ひまり姉ちゃん…発見」

「…言ったの私だけど、辞めてくれない?」

「生き別れた姉弟だったんだー…」

「違うから!?!?」


即座に突っ込むとククッと喉で笑い出す。


彼の笑った顔が…好きだ。


私好きなんだ。

草摩潑春くんのこと。


でも…ダメだ。



「丁度…良かった。話したい事あったの」



彼は私を見ると、いつもの優しい目をして首を傾げる。



「…姉弟って訳分からないこと勝手に言ったこと申し訳なく思ってる…でも、もう関わりたくないの。貴方と。こうやって私の所に来ることも辞めてほしいんだよね」


草摩潑春くんは目を見開いた後「急になんで?」と真剣な眼差しで私を見つめる。


「急…じゃないよ。最初っから嫌だったんだよ。分からない?根も葉もない噂流されるし、もうたまったもんじゃない。ほんと迷惑。二度と話しかけないで。二度と近寄らないで」


出来るだけ嫌悪感を表情に宿した。
心と正反対の表情を作るのは随分と気持ちが悪いものだった。

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