第1章 何処にいても【潑春】
草摩潑春くんは廊下で会えば急に私の前に立ちはだかり、通せんぼをすると2、3度頭をポンポンとして何も言わずに去っていったり。
急に教室に来たかと思えば「ペン忘れた。貸して」と、そんな事で来るなよと言いたくなるようなしょーもないことでクラス訪問をしたり。
隣のクラスの王子様程ではないが、女子人気が高い彼が一匹狼の私と付き合っていると事実無根の噂が流れ始め、女子達が騒ぎ始めたり。
1番キツかったのは、草摩潑春くんと仲が良いと勘違いした金髪ショタボーイと学園の王子様が普通に私に話しかけてくるようになったこと。
そして王子が話しかけてくるもんだから、親衛隊の方達に睨まれるわ、その親衛隊に目を付けられている本田さんやお電波女子や金髪おヤンキーに「昼飯一緒に食おうぜー」と何故か誘われて一緒にランチすることになるし。
オマケにオレンジ髪の人にまで「春、どこか知らねェ?」とふっつーに話しかけられる。
草摩潑春くんが現れてからというもの、平穏な学園生活が送れなくなった。
「ひまり、最近ひとりでいること少ないね」
また屋上の塔屋に現れた彼が、僅かに頬を緩ませてこんな事を言うもんだからイラッとする。
望んでない。そんなこと。
「困る…人といると惨めに、なるだけだから」
他人と関わるのは苦手。
コレを言えば嫌われるんじゃないかとか、言葉の一言一句に気を使って、馴染めなくて…
輪の中に居ても私だけ違う所にいるような気がして。
私だけ、対等に扱われてる気がしなくて惨めだった。
そんな時に流れた根も葉もない私の悪い噂。
もうそれならもうひとりでいいじゃんって他人と関わることをやめた。
それなのに…
「……でも、俺には見えたけど。初めてひまりを見た時に」
「…何が見えたのよ」
「"寂しさ"」
私は目を見開いて、いつものように無表情で涼しい顔をした草摩潑春くんを見た。
は?寂しさ?
私が自分の意思でひとりでいることを選んだのに何言ってるの?
「由希に…似てる。ひまりは」
さらに訳がわからない。
あの王子様と私が?
あんなにキラキラしてて、周りに人が集まってくるタイプとどこが似てるの?
全く持って理解出来ない。
草摩潑春くんが言うことは。