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短編集【果物籠】

第1章 何処にいても【潑春】



「だからまた前みたいに過ごしたい。嫌なら…また暴れる」

「ふふっ。なにそれ脅し?」


私が笑うと彼も笑った。

「うん。脅してる」と言葉をつけて。


嬉しかった。
また前みたいに彼と過ごせるのだと思うと…



「いーい感じなとこ悪いがちょっと職員室に行こうかー」


ハッとして隣を見ると気まずそうにしている王子と嬉しそうに笑ってる金髪ショタと、そして仁王立ちしている白木先生。


忘れてたけど、教室で暴れ倒したんだ彼は。

これは職員室で絞られた後、親呼び出しの停学確定だろう。



彼とまた前みたいに過ごせるのは少し先になるのか、とちょっぴり肩を落とした。




それからはまた、私は本田さん達とお昼を一緒に過ごしたり、停学明けの春と他愛のない話をして過ごした。

確かに私もイイ感じだと思ったが、どうやら勘違いだったみたいで…春と過ごすことは増えたが恋愛的要素は丸っ切り無し。

触れられることすら全くなかった。


この関係が壊れるのが怖くて気持ちを打ち明けることも出来ず、気が付けば最後の登校日。

そして冒頭に戻る。



そう、本当に春はどこにいても必ず私を見つける。


「最後まで私のいる場所わかるんだねー」

クスッと笑うと「当たり前」と口角を上げる春。


やっぱりカッコいい。



「卒業…由希や夾に会えなくなるの…寂しい」

「私はそこに入ってないんかい」


突っ込むとフッと笑った。

なにそれ。会えなくなって寂しいと思ってたの私だけなの。

今日また見つかったら、この想いをぶち撒けようと思ってたのに…その気は失せた。

最後の最後で玉砕なんてツラすぎ。絶対無理。



「じゃあ、ひまりが寂しくないようにコレ、あげる」


春が差し出してきたのは自分の生徒手帳。


いや、ちょっと待て。


これはいるやつでしょ。


学生生活に欠かせないものでしょ。


何考えてるの、いつもの天然ボケ?


「いや、これあげちゃダメなやつ」



受け取らずにツンと不機嫌さをアピールすると、私の手を掴んで強引に渡された。


「だーめ。ひまりにあげる」



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