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【アクナイ】滑稽な慈悲

第8章 全てを見透かしていた者



「俺に彼女を追う許可を下さい」

「アドナキエル、気持ちはわかるが…」

「今も傷ついてる…源石に蝕まれて苦痛に苦しみながらも、俺たちを待っています」

「…わかっている。まだそんな遠くに行っていないことも」


ドクターは近くの氷についた血に触れると、舌を打って耳に手を当てた。


「シージ、どうだ」

「!」


ドクターは手を回すのが早い人物だった。だからこそ、この事態に早急に対応できている。
どうやら先鋒オペレーターであるシージというオペレーターを出動させているようだ。その会話を聞こえるように全チャンネルに変更して流す。
と、アドナキエルの首にかかっているヘッドフォンにもその声が届いて来た。


「<<氷柱や電流…炎が続いている。…いや待て…ロドスから2キロメートルほど離れた所に穴倉を見つけた。氷で覆われているが、ここから途絶えているぞ。数回の使用感もある。敵の拠点だ>>」

「了解した」


そう言ってドクターは足早に部屋を出る。その後をアドナキエルがついて行く。


「ドクター」

「アドナキエル、…それに、スチュワード、メランサ、カーディ、アンセルの行動予備隊A4を筆頭に編隊を組む」


彼は5人の他にオペレーターの名前を次々に挙げて即座に的確な判断で隊を組んでいく。
今回は狭い穴倉の中が戦場だと理解しているために、遠距離オペレーターは少なめに、前衛と先鋒オペレーターの名前が呼ばれた。

ロッカールームを越え、部屋の外に出たドクターは、もう既に戦える準備ができたという顔をしているスチュワードとメランサに頷く。
その横にいるカーディの肩を右手で掴んで、左手ではクーリエの右腕を掴んだ。


「話は聞いていたな?事態は思っているより深刻だ。さくらのことをあまり知らないだろう2人はサポートだ。頼んだぞ」

「了解です」

「は、はい」


ドクターはその返答を聞いたのを皮切りに、耳に手を当て、前を向き、目の前のガラスの外を睨み見た。


「編成された各オペレーターへ。さくらを奪還するのはロドス…いや、世界の存命に関わることだ。彼女が今ここで死ねば、テラは死んだと思え。各員心せよ!!」

「「「了解!!」」」


アドナキエルは所定の場所に真っ先に走り出した。

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