第8章 全てを見透かしていた者
そこは―――とても無機質な部屋だった。
壁や床、天井には源石術を何度も受けて来たのだろう。黒い染みや、へこみが目立っている。強力な源石術を使用したことが一目瞭然だった。
ただ、ひび割れや、砕けているなどといった破損はどこにもない。
「武器はここだよ。はい」
「?」
自分の足の長さほどの剣を渡された。
だが、これで源石術が使えるのか、という目で見るとクーリエは笑った。…常に微笑んでいるのでさらに口角を上げたの方が正しいか。
「これは近接も術も使える剣だね。そこにあったから使ってごらん」
「なるほど…ありがと」
「うん。…本当は送り届けて終わりって考えていたけど、ちょっと見学していってもいいかい?」
「うん。構わないよ、ありがと!」
「じゃ、あそこから見ているよ」
あそこ、と指さされた場所には何もない。
きっとマジックミラーか何かがあり、こちらからは見えないが、向こうからは見えるという仕様なのだろう。
クーリエが扉を開けて出て行った途端、パシュ、という空気の抜ける音と共にこの空間が密閉されたことがわかった。
どうやらこの部屋は一人になると起動するらしい。周囲に何やらシールドのような物が張られ始めた。
「<<君の実力を見せてくれ、さくら>>」
会話はできるようだ。あそこ、と言われた壁の方に頷いて、剣を握る。
ドーベルマンさんが教えてくれたように、まず武器に埋め込まれているのだろう源石に集中する。
すると、またあの時のように全身から力が溢れ出す感覚と共に体の血液が高速で流れていくのを感じる。
ホウと息を吐けば、白い息が宙を舞った。