第6章 秘めたる力
「私の見立て通りだ。彼女はただの貧弱な異世界人じゃない。空間を越えて生きるために進化した人間だ」
「…先民ではない故に一歩間違えば源石に飲み込まれる力を手に入れても平気な顔をしているな」
「そこが変だな…先民でなくとも、あれほどの適合率であればひとたまりもないだろう。…ほら」
ドクターはフードの下から目を細めてさくらを見た。
白い息を吐く横顔には今朝はなかった黒い結晶が根付いている。思わずドクターは目を閉じた。
「さくらは自身の力に飲まれて一気に感染してしまった。左頬に源石結晶が確認できる」
「…そうだな。力に代償はつきものだ。だがあいつは共に地獄に歩むことを選んでくれた。優秀なオペレーターになる」
そう、ドーベルマンが言った時だった。
「ドクター!」
後ろから声をかけて来たのは研究員の一人だった。
ドクターは体ごと振り向くと、焦った様子の研究員を見つめた。
「どうした?」
「数日前に行った狙撃オペレーターさんたちの定期診断の結果が出て…それが…っと、兎に角来てください!」
「?分かった」
ただならない様子故に、この場をドーベルマンに任せてドクターは走る研究員の後を追った。