第5章 鍛錬開始
「…っう、わッ!?」
啖呵を吐いたものの、運動不足の日本人には少々この世界で戦うのはキツイようだ。
盛大にすっ転んだ私の前でパシン、と革の紐が唸りを上げて、思わず顔をゆっくりと上げた。
「立てさくら!そのままでは戦場で1秒ともたないぞ!!」
ロドスで教官と呼ばれる新人教育者に当たる女性、ドーベルマンさんが武器である鞭を地面に叩きつけて唸った。
支給された戦闘服には不格好なプロテクターがついていたが、やはり守れていない部分で近付いてくる地面を受けるとそれなりのダメージは入って肺が収縮して悲鳴を上げた。
歯を食いしばり、何とか立ち上がって再び走り始める。
同じくランニング訓練をしている周囲の訓練生にあたるオペレーターたちは、心配をするか嘲たが、私は構うものかと走り続けた。
内容は至極単純でこのだだ広いこのデッキを10週だそうだ。だが、私には50周と命じられている。こんな貧弱な体なのだ。トレーニング内容が重くとも不思議ではない。
不意にデッキの端を一瞥する。―――見なければよかった。
40周と体力の差があるのだ。そりゃあそうだろう。
ちらほらとノルマを終えて床に転がるオペレーターが出てくる中、まだその10周のノルマすら満たしていない私はただの見世物だ。