第23章 殺意の目
「…」
3回のノックの後、数秒後に扉が開いた。私の前に立つのは、翡翠の目を持つ彼だ。
「わざわざ来なくてもいいのに」
全てを悟っている顔だ。
それでも自分の口で言わなければならなかった。
「…レイリィ、私は」
「言わなくてもわかってるよ。…僕は選ばれなかったんだね」
「…」
「いいんだ。人生生きてればこんなこともある。でも…」
レイリィは初めて暗い顔をして、俯いた。
指先を体の前に組んでは、くるくると人差し指を弄んでいる。
しばらく沈黙の時間が続くと、彼は意を決したように顔を上げた。
「僕は…君の恋人になれなくても、君といると楽しかった。だから…友達では…いたい」
「レイリィ…」
「駄目…かな?」
上目遣いの困った顔。そこにはもう恋する青年の顔は無かった。
今はただの友達が親しい友人に見せる表情をしている。
親しい以上の関係は無理だと分かっている。だが、関係は切りたくないと思う彼の想いは一緒で、私は彼の手を取った。
「駄目じゃないよ」
「!…はは。本当に、優しいな。普通は警戒して去るんだけどなぁ」
「レイリィはそんなことしないよ」
「…君は本当に人を良く見てる。だからこそ、あの2人も好きになったんだろう。…ありがとう。嬉しいよ。今度一緒にゲームしよう」
「うん」
レイリィは微笑むと、自身がつけている腕時計に視線を落とす。
何か時間を気にすることがあるのだろうか。