第21章 もどかしく思ったり、思わなかったり
私があの騒動から動くことができたのは、窓の外が暗くなってからだった。
廊下を歩いて行く私の目指した場所は2人の部屋…ではなく、ドクターの執務室だ。
やるべきことをやらないと。2人はその後だ。
「ドクター、さくらです」
「どうぞ」
同じような会話の後、扉を開ける。
中にはドクターの他にアーミヤがいた。しかし二人の顔色は酷いものだ。
「あぁ…さくら、アドナキエルとスチュワードは?」
「回復済みです。…アーミヤ、大丈夫?」
「私は、平気です…」
どう見ても平気ではない顔色だ。
その様子を見て、ドクターに訴えかけることを決意した。
「サナは今どこに」
「あぁ…個人部屋の最奥に行って貰うようにした」
「あの匂いについて何か指示はしましたか?」
「いや…言えなかった」
そりゃ言えないよなぁ、とドクターを気の毒に思った。
まだ顔色の悪いところからして解放されたのはつい先ほどと言うのが伺える。
「なら私が行ってきましょう。今日はもう遅いので明日になりますが」
「頼めるか」
「はい。…これではロドスの士気も下がりますからね」
「よろしく頼む。… サナはロドスで保護の対象となった。…さくら、君の能力も持っている。鉱石病を治す力、そして強大な源石術を操作できる力だ」
「同じですね。…ただ、その言い方ですと、源石術は最初から操ることができるんですね」
「悲観しなくてもいい。さくらは十分凄いよ」
「はは、ありがとうございます。…では行ってきますね」
「待って、さくらさん」
アーミヤに手を掴まれた。
振り返ると、アーミヤは眉をハの字にして何やら心配をしている顔をしている。
「お願いします…これ以上ドクターに負担がないように…」
アーミヤと私の2人だけにしか聞こえないほどの声量で言った。
私は勿論だ、と言い安心させるようにアーミヤの肩を軽く叩き、部屋を出た。