第21章 もどかしく思ったり、思わなかったり
「今日一緒に寝たいです…」
「最近そればっかりなので駄目です」
「!」
断られると思っていなかったのだろう。バッと顔を上げたアドナキエルはどうしようもなく悲しそうな顔をしている。
眉はハの字。口はへの字。見るこっちが悪いことを言ったなと思わせる顔だ。
「そんな顔しても駄目。甘やかすなってドーベルマンさんも言ってたし」
「なら僕は良い?」
「スチュワードも駄目。それに私の部屋はもう満員なんだ。メランサがベッド使ってるから」
「む…」
「後、彼女に話して香水取って貰うよう言わないと…」
「ならその後俺の部屋で3人一緒に寝ましょう?」
「それなら問題ないだろう?」
「めっちゃ寝たがるな君ら!?」
そういえばアドナキエルに一度、何で一緒に寝たがるの、と聞いたことがある。
すると、彼は寝ぼけながら言ったのだ。
"落ち着く匂いだし、ふかふかだから"
「(私は干したての枕か何かか?)」
その時は特別意識をしていなかったためにただの試練だと思って耐えていたが今はそうではない。
今の状況も気が気でない。いい加減血が沸騰しそうだ。
「はぁ…そろそろ私は行くよ」
起き上ってソファの端に座り、足を下ろす。大きく伸びをすると、ゴキゴキと背骨が悲鳴を上げた。
足や他の個所に滞留していた血が頭に回って目の前が暗くなる。
頭を抱えていると、服がチョイチョイと引っ張られた。
アドナキエルとスチュワードも起き上がり、私の両隣に座る。