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【アクナイ】滑稽な慈悲

第20章 無意識の悪魔




「あぁ、さくらさん…!目を覚ましましたか…!」

「メランサ…ここは」

「ここは貴方の部屋ですよ、さくらさん」

「アンセルも…」


体を起こすためにベッドに肘をついて起き上った。


「昨日、貴方が倒れたってアドナキエルさんとスチュワードさんが大慌てしてて…ドクターを探そうとしたそうなんですが、その時は別の対応をしてていなかったんです。仕方がないから研究所に運んだんですが、研究所もバタバタしてたみたいで…」

「それで僕のところまで運んできてここまできました。医療部は今使えないので」

「ロドス…何かあったの?またレユニオン関係…?」

「いえ…それが…」


アンセルがメランサに目配せをしている。
首を傾げたその時だった。


「さくらっ。おはよ!」

「カーディ…おはよ」


カーディが部屋に入って来た。その後ろには…


「失礼するよ、さくら」

「クーリエまで…みんな揃ってどうしたの…?」

「まぁ倒れたって聞いて来た…っていうのもあるんだけどね…多分君の知り合いは他も"避難"してくるよ」

「避難?」


その言葉を聞いてその場にいる全員が暗い顔をする。
避難とは何だろう。まさかロドスが攻撃に遭っているのかと思ったがこの場所は特別耐久があるわけではない。
よくよくみれば皆暗い表情の上、顔色が優れない。カーディはそうでもなさそうだが…。


「ごめん、なさい…またちょっと気分が悪くなってきました…」


メランサが手で口を覆って体調が悪そうにしている。その肩を掴んだアンセルが眉を顰める。


「大丈夫ですか?落ち着いて呼吸して下さい…」

「え、大丈夫なの?」


立ち上がりながらそう聞くと、メランサが薄く開いた目で私を見るなり抱き付いて来た。
軽く受けとめたら、メランサが顔を押し付けたせいで籠った声のまま言う。


「さくらさん…良い匂い…落ち着きます…」

「う、うん?」

「…安心する匂い…」


そう呟いて強い力でグッと私を抱きしめる。とても辛そうで、引き剥がせる状態じゃないことはわかっている。

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