第15章 疲労困憊
『アドナキエル?大丈夫?』
疲れていると思っているらしい。盛大な勘違いをそのままにしていると、汗が張り付いたアドナキエルの額をさくらが撫でた。
『汗…汚いですよ…』
そう言うと、さくらは鼻で笑って言った。
『私も今日は汗まみれだよ。今更』
こういうところに惹かれるんだろうな。と心で呟きながら目を逸らした。
その後、部屋に戻ることになったのだが、モヤモヤが限界値のアドナキエルはダメもとで言って見せた。
『…今日、一緒に寝てくれませんか…』
『ぶふっ』
駄目だろうな、と思ったアドナキエルだったが、さくらは赤い顔の膨れっ面で了承した。
そして今、彼らは同じベッドの上で2度目の添い寝をしている。
程よく腹もいっぱいになり、後は寝るだけだったが、アドナキエルは腕の力を弱めない。
「ぐえええ…」
1回目の時と同じだった。さくらは潰されたカエルのような声を出してパシパシとアドナキエルの背中を叩いている。
「つ、疲れてるはずなのにどこからそんな力がぁぁ…」
彼は勿論大量に青タグを盗ったため、疲れてはいたが、力が出せないほどではなかった。
今だけは自分が独占できると思った結果の行動だった。自然と腕の力が強まった。
「(俺だけ見て欲しい、なんて…ズルいかな)」
「私を…私を許せー…っ」
「(…まぁでも今は、見てくれているからいいや…)」
すり、と黒髪に額を付けて目を閉じた。