第15章 疲労困憊
「アドナキエル?大丈夫?」
長く白と黒の前髪を上げると、瞼が少し開いて金色の目がこちらを見た。今や笑う元気すらないようだ。
「汗…汚いですよ…」
喋った。と思えば変なことを気にする人だ。掻き上げた際に触れた額の汗が気になったのだろう。
「私も今日は汗まみれだよ。今更」
「…」
「疲れた?」
「…大分…」
「部屋戻る?連れてってあげるよ」
「…はい」
「よし、じゃあ立って!」
アドナキエルの腕を取り、肩に回して立ち上がる。その後、ワイワイと食事会をしている4人を見下ろして言った。
「後のは全部食べていいからね。リュックと水筒は食堂のものだから、ノイルが返却してて」
「了解」
「じゃあお先に失礼するよ。じゃあね」
「バイバイさくら~!」
「ありがとねん~!」
「ありがとうございます…!」
空いている右手でヒラヒラと手を振ってデッキを出る。
もう既に誰もいなくなって静かになった廊下をゆっくりと歩いていく。さて、部屋はどこかなと声を掛けようとした時、アドナキエルは口を開いた。
「…今日、一緒に寝てくれませんか…」
「ぶふっ」
とんでもないことをさらりと言ってみせるのは何だろう。思わず苦笑いをしたが、いつにない切ない声に聞こえたため、断れなかった。
「…しょうがないな…シャワー浴びてきて、部屋にメランサちゃんが食事置いてくれてると思うから食べて、準備できたら来てもいいよ」
「…了解、です…」
どれだけ疲れたんだろう。体力がない、とは言うものの歩くのも精一杯になるほど無いとは思えないが。…たった5人であれほどの青タグを捕まえたと考えれば大したことなのだろう。
兎に角、部屋に送ろうと部屋の場所を聞きつつ、目標の場所へと歩いて行く。