第15章 疲労困憊
「おい」
威圧感が酷い。だが身分が上の者と話す時は常に冷静に動じず、と本に書いてあったため、私はエクシアを引きはがして彼女の前に立った。
「はい、ドーベルマンさん」
「お預けじゃなかったか?」
黙々と食べる3人のことを言っているのだろう。本来ご飯抜きがペナルティとして科せられているのだが、それを指摘しているらしい。私はにこり、と笑って答えた。
「ええ、食堂のご飯はお預けです。でも、これは訓練を頑張ったオペレーターさん達への"個人的な差し入れ"なので!」
そう勝手にこじつけたら、ドーベルマンさんは目を伏せて溜息を吐いた。
「本当に…平和な世界から来たんだな…お前の慈悲は人柄のものだ。大事にしろ」
「!はいっ」
「…最初の頃の元気が戻って来ていてドクターも嬉しそうだ。これからも我がロドスのオペレーターたちに優しくしてやってくれ」
「はい!ドーベルマンさんもお疲れ様です!」
「あぁ、お疲れ様」
去っていくドーベルマンさんを見送っていると、後ろがとても賑やかだ。見ると、リュックの中にあった大量のおにぎりが凄い勢いで無くなっていくではないか。
苦笑いして見ていると、視界の端で未だに動かない天使がいい加減気がかりだ。
近寄って目の前にしゃがみ込み、様子を見てみるとぐったりと壁に体を預けて俯いている。水筒の中のものも少ししか減っていない。
これは大分疲れたんだな、と思い手を伸ばした。