第4章 セカンドインパクト
目に入った出入り口のドアが気になり、体を起こしてベッドから足を下ろし立ち上がってみた。
思い出すのは昨夜の天使の事。きっとドクターに報告にでも行ったのだろう。
もう来ないと良いけど、とそのドアを開けた。
「あ、おはようございます」
「うわぁああ!!?」
開ければ人が立っているなんて誰が予想できるだろうか。驚いた私はドッキリを仕掛けられた人間のように、間抜けに尻餅をついて目の前で笑う天使を見上げた。
「な、何を…してる、んですか…?」
「え、待ってました。朝ご飯食べてないでしょう?倒れますよ」
はい、と手渡されたトレーの上には、本来食堂で出されるはずの食事だった。まだ温かいところからして時間は経っていないようだが。
「で、でも…い、いつから待ってたんですか…?」
「8時ぐらいでしょうか。10時で食堂は閉まりますからこうして持ってきたわけです」
クラリと眩暈がした。
2時間、この男はここで待ち惚けをしていたという。しかも食事を持ってきたという徹底ぶり。ドクターの指示とはそんなに強いものなのかと怖くなる。
「こ、ここまでしなくていいですから…って、もう管理はお断りしたはずですが…」
「はい。ドクターにも貴方の意向に沿うように、管理はしなくていいと言われました。なのでこれは俺の意思でやってます」
「は、はい?」
「異世界人っていう貴方に興味を持ってしまったので勝手にやってます!」
言い直した彼のキラキラとした目が眩しい。再び眩暈が襲って来た。
異世界人とドクターや数人の関係者に告げたところ、大半が信じてはおらず、聞き流したりする者もいれば、嫌悪の目をする者、化け物を見るような目をする者、それぞれだった。
だが、こんな目を向けられたのは初めてだった。
嘘も、陥れようという悪意も何もない目に顔が引きつっていく。同時に、目の奥が痛くなって段々視界が歪んでくる。
優しさに、固まった緊張と警戒が解されていく。はたりと瞼を下ろせば涙は簡単に流れてしまった。
金色の目は大きく開かれ、オロオロと揺れる手が触れるか触れないかのところで止まる。
「わ、どうしたんですか?何か痛いところでもありましたか?ひょっとして俺、また何か傷付くこと言いましたか?」
腫れものを扱うような周囲の目とは違う、好奇心だけで接してくれる目に救われたのだ。
