第1章 おやすみ、現実
次に意識が戻ったとき、
目に入ったのはあんまり覚えのない天井で。
しばらくして、ここが保健室の天井だということを理解した。
いつの間にか寝ていたベッドから起き上がろうと体に力を込めた時、
横のカーテンがシャッと開き、
「月島くん!目を覚ましたのね!」
「蛍!起きたの!?」
養護教諭と母が、焦ったように僕を見て話しかけた。
僕は戸惑いつつもひとつ返事をしてそれから、
1番気になったことを質問する。
「あの…僕はどうしてここで寝ているんですか?」
「ああ、あなた、保健室のドアを開けるなり、こっちに倒れ込んできたのよ。」
倒れ込んだ……?
そう言われてみれば、僕はたしか山口に寝るのを勧められて……
ここへ来た時から……意識が途切れたような……
「とりあえず寝かせて、お医者様に診てもらった方がいいから、保護者様にお電話を入れて……それでお母様が。」
先生が母に目をやると、母は頷き、話を続けた。
「蛍のようすがね、見かけは平気そうでもちょっと心配で…。…いきなり倒れ込むとかね。だから急だけど、この後病院に行くことになったわ。」
「病院……?」
僕が?なんで?
ただ、今日は少し調子が悪いような気がした、たったそれだけなのに…?
僕の顔を見ると、2人は首をすくめて、
それからヒソヒソと、何か会話をはじめた。
「(…………え)」
―突然、体がこわばる。
(これって…金縛り…?)
体を動かせずにいると、だんだん意識が遠くなっていく。
「蛍!」「月島くん!」
(……だめだ、なんで)
また、景色がフェードアウトして。
どうして。こんなはずじゃ、なかったのに。