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【HQ】月島蛍の夢

第1章 おやすみ、現実


「…まただ」
気づけば_
白い、靄がかかったようなこの世界。
(この前の続きなのか?)

僕は…何か心の中にざわざわとしたものを覚え、
方角もまともに分からないこの世界を、ただひたすらに走っていった。

「はあっ、はあっ……」

息切れがして、立ち止まる。

―と、

『また、会ったね』

あの声が聞こえた。

目の前の女の子は、ひどく寂しそうな目で僕を見ていた。

「君は一体、なんなんだ?ここは何処?」

2人の間に沈黙が訪れる。

僕は頭を必死に回転させて、ひとつの結論を出した。

「もしかして、これは僕の夢の中?」

『正解』

「そして今、現実の僕は意識を無くして眠ってる?」

『そう、それも正解。よくできました』

「ッ、そんなこと言っている場合じゃないんだよ!早く起きなきゃ……僕は……どうして……」

『急に、意識がなくなって、傍から見ればそれは、あなたが急に居眠りでもしているように見えている』

「ああそうさッ、」

〈だけど〉

言葉が重なる。

『……それどころじゃなく、今ここの状況を知りたい』

「…………。」

『月島蛍くん』

(!?どうして…)

『どうして僕の名前を知ってるの?でしょ?』

言わんとしていた言葉を奪われ、空気を呑んでいると、
彼女は淡々と話をつづけた。

『私は、あなたを知ってるの。月島蛍くん。』

「不公平だ。僕は君を知らない」

『きっとわかってるはずだよ、私の事』

ああ、僕を呼ぶ声が聞こえる。
だんだん意識が戻って、僕はこの後目を覚ますのだろう。

「待って!最後に一つだけッ…君の名前を教えて!!」

女の子は、にこりと微笑むと、傷だらけの腕をすっと伸ばして、
その指先を、口元に添えてこう言った。



『 “ 愛衣 ” 』

・・・・・
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